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『官能のミニマリスム
寄り添うエレガンス(気品)』
病得た者は、時として
世俗の囲いから軽々と舞い上がり
不羈奔放なる審美の子として
世界と対峙する。
作家の文体(スタイル)は
タイムレスだ。
語彙豊かにして過剰がなく
才の筆に選ばれ置かれし色彩は
鮮やかなれど
あからさまではない。
筆致はきっぱりと
だが、冷たさはなく
物語のライン(輪郭)は
明確であるが
尖(とが)らない。
もの柔らかなトーン(語調)が
読む者の感性にそっと寄り添う。
作家は事実を真っすぐ に観て
作中に生きる個々人の言葉を
正しく計って表現している。
ミニマムとは
不必要な要素のない
宝石の美質に似る。
翠玉を想わせ
「分化の色」の名を持つ弟と
黒曜石を連想させる名の姉は
父という美学を継ぐ者として
スプレッツァトウラ(練達)
の高みに
その関係を具現化する。
そのものと
そのことが持つ
質の全てを内包して
これは作家の
「モナ・リザ」である。
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