特別挿入話/地獄を課した男のジゴク

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特別挿入話/地獄を課した男のジゴク

特別挿入話/地獄を課した男のジゴク 「フン、麻衣よ…、お前は聞いてる以上だった…。年はずっと下だが、なんていい女なんだ。匂うようだぞ…」 相馬豹子こと本郷麻衣と大打ノボルの初対峙…。 それはものの十数分であった。 だが…、そのわずかな時間に凝縮された二人によるエネルギーのぶつかり合いは、何ともすさまじいものがあった…。 舞台はジャッカル・ニャン店内奥の応接兼執務室…。 そこで、麻衣とノボルは、互いに焦がれ合った末、運命の宿敵として互いを確認し合った…。 それはそれぞれのスタンスに従った、潰し合いの宣言を交わした儀式の場そのものでもあったのだ。 ... 「ふふ‥、あの部屋にいたモンが言うには、ノボルさん、なんだかんだ言って嬉しくてしょうがないって顔つきだったってな」(椎名) 「確かにそれはあっただろうが…。客観的事実として、ノボルさんはオレ達の分析で導き出していた、本郷麻衣の”決定的”な弱点をその感覚として確信できたんだと思うぜ」(タカハシ) 「それなら、安心しただろうな…。本郷麻衣ヒット成就の不可欠要件が、ヤツの弱点を引き出すことにあったんだからな」(椎名) 「椎名…、ノボルさんは麻衣にの”それ”を直視するの、ある意味では辛かったんじゃないかな」(タカハシ) 「どういうことだ、タカハシ…」(椎名) 「…」(タカハシ) ... 「…奴を確実に殺せるからだよ。ヤツの弱点を突くこと…。それをNGにしないことは、東龍会とのパートナーシップを貫徹する上で避けられない。当然な。そのことで、心の芯までかつてなく熱く燃えさせられる、やっと出会えた年下の少女をだ、この世から”真正面を避けて”殺さなければならない運命を呪ったかもってな…」(タカハシ) 「三貫野…‼」(椎名) 「彰ちゃんよう…、ノボルさんって人は、ずっと乾いて生きることを己に強いてここまできたんだろう?それってさ、彼がドライだクールだってそんな表面上じゃあねえったろ?」(タカハシ) 「ミチロウ…、お前、ノボルさんに何が言いたいんや?」(椎名) 「ノボルさん…、喘息持ちなのによう、敢えて医者にも通ってないやろうが。…あの人は、ずっと、潤いを拒んで生きることを自らに課してきたんだ。だがよう…、皮肉にもそのことこそが、彼をのし上がらせるエンジンに他ならなかった…。何ともだと思うぜ…」(タカハシ) 「その渇きを潤わせたのが、麻衣だとかって言うのか、お前…⁉」(椎名) 「彼は悟ったはずだ。この少女こそ、心の底から求め探してた相手に違わないと…。やっと巡り合えた本郷麻衣という子のストイック度も、ノボルさんと同次元、同質のものだった…。多分な。…で、二人は初対面で、お互いに極限の域までやろうと…。そんなシグナルを確認し合ったはずだ。だがノボルさんは、真っ向から彼女と戦えないんだ。そんな運命の巡り合いを果たした17の少女をさ、消さねばならないんだ…。手段を択ばずに…」(タカハシ) 「…」(椎名) 戦後15年もしないうちに生を受けた九州男児二人の、同志を巡るコアな会話はここで打ちきられた…。
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