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デンジャラス・エンドレスの始まり
その1
麻衣
私は小さい頃から、危険なモノとの出会いに心を焦がしていた
毎日ずっと、もっと、もっとって‥
モア・モア・モアって
幼心にも、その気持ちの高まりを抑えられない感覚が分かった
子供の頃は、そんな自分が怖かった
でも、中学に上がった頃になると、そんな自分から変わることの方が恐ろしくなったよ
だって、”それ”なくなったら、私じゃなくなってしまう気がしたんだもん
なにしろ、その焦がを貪る自分内部の気持ちは、上に上がる一方なんだ
そうよ、一方通行な訳よ…
故に私の毎日って、要は下りのないエスカレーターなんだ
...
そのエスカレーターがたどり着ける高さの限界地は、残された時間と、自己をどこまで持っていけるかの幅で測れる
すなわち、”いっぱいいっぱい”は予兆可能なんだ
今の焦がれ、横田競子への”それ”を超えたかも…
...
「…そうか、真樹子さん、夜通しでね…。それはお疲れ様でした(苦笑)」
「そうなのよ、飲み過ぎで吐きそうだわ。だから、麻衣さん、要点だけ報告するわね」
「ええ、お願いしますよ」
真樹子さんからは6、7分ってとこだったかな
これ以上は吐くわ、この人(笑)
...
ナルホドだわ(薄笑)
大場ちゃん…、巧妙に嵌まったな…
行きつけのバーで、たぶん、薬だわ
そんで、気が付いたら、違う店に運搬されてて…
そうなりゃ、何でもでっち上げ可能だわ
アイツ、スキありすぎだわな
いっそ、砂ちゃんの片腕から離れさせて、私が使うか(笑)
...
剣崎さん、私の判断、了としてくれたみたいだ
事後報告も、全く咎められなかったし…
まあ、トップの矢島さんには、私の対応でいろいろと苦慮はするよね、今回もさ…
それは、あの人でなければできないことだけど…
でも、そこをつけ狙う輩もいる
それがこの世界なんだろう、おそらくはね
私はそれを自覚した上で、更なる危険な相手と向き合う
ご対面となる日…、それ、私のカンでは明日だ
そこで、ノボル君と初遭遇だわ、たぶん…
...
その日の午後、三田村峰子先輩ことアンコウ女史と喫茶レオで打合せの場を持った
昨夜の一件は、ひと通り伝え、それに伴う情報操作をお願いしてね…
「麻衣、砂垣の件はたやすいわ。すぐにやっとく」
おお、いつもながらアンコウは頼もしい…
そこで、彼女にとって”未知の領域”はどうなのかな
私はさりげなく問いかけたんだけど…
「…まあ、やっぱりな…、ビビッってるよ私。今の感触にさ。言ってる意味は分かると思う…」
「…」
「…おそらくね、東龍会の胸の内は二つだよ。ターゲットを相和会の組織自体に重点を置くか、若しくは…、麻衣を潰すことに絞るか…」
「どういうことですかね、先輩‥」
私は淡々とした口調で聞いたわ
...
「あのさ…、私も情報を敏感に感じ取って、すくい上げる習慣がついてるからね…。伝わるんだわ、奴らが水面下で蠢く”振動”がさ。その”振動”を探知することで、大まかな”カタチ”の予測なんかがアタマに描ける訳ね」
おお…、まるで、水中のかすかな振動を察知して、何100キロも離れた魚を捉えるクジラやシャチみたいだわ
ふふ、まさしく深海に住む生物の能力じゃん(笑)
...
「あのね、ニヤケてる場合じゃないわよ、アンタさあ…。ジャッカル・ニャンへ殴り込んで、その後すぐ、タクヤとかいう男にまとわりついていたチンピラ3人への尋問と暴行でしょ…。これ、先方にはかなりの衝撃よ。そんで、翌日は例のカセットテープお届けだよ。この衝撃波は、原爆並みね。アンタが相和会と協調して行動してんのはもう見え見えなんだから、東龍会は顔色が変わったでしょうよ」
「そんなもん、こっちは承知でやってますって」
「だがね…、私の感じる振動はさ、今までとはちょっと違ってきたんだって。端的に言えば、明らかに新たなレベルに達したわ」
「今一つ意味が、わかりませーん」
「まったく、おちょくってる場合かよ、麻衣。やんなっちゃうわ、こっちが深刻になってるってのに…」
あらら…、アンコウ先輩はホントに深刻そうな表情してる
「ああ、すいません。まじめに聞きます。ストレートに言ってもらっちゃっていいですから…」
すると、アンコウは咥えていたタバコを消し、一息ついてから口を開いた
「…はっきり言うわよ。アンタの行動はね、連中の怒りを1ランク、いや2ランク、アップさせちゃったっての。いいかい、これの意味するところは、奴らを本気にさせたってことよ。…私の予感では、もうこの件は関東本家に持ち込まれてるわよ」
えっ?関東本家…
つまり、東龍会が傘下に加わってる広域組織の頂上まで行っちゃってるってことかよ…
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