デンジャラス・エンドレスの始まり

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その2 剣崎 「…わかった。こっちも”それ”は踏まえておこう。とにかく、業界内でも細かい動きが目についきてるし、お前も細心の注意を払ってくれ」 麻衣からは事後報告だった あのヤロウ、またまた味のある手を打ったもんだ まあ、仕掛けた連中もさぞ、慌てたことだろうよ(苦笑) 愚連隊のケンカ相手から、一方的に被害者の立場でサツに通報されたんじゃな、はは… 麻衣はコトの経緯を岩本真樹子から注意深く聞き取り、一連の揉め事とは切り離せるとすぐに判断に至ったんだ このケースなら仮に警察の捜査となっても、前後の繋がりは取れず、昨夜の一件は単に被害者で通せると… おそらく、警察への話し方も、麻衣が細かく指示を下しただろうよ 仲間の救出を真っ先に優先させた砂垣のフライングに、麻衣は実に奇をてらった”返し”で対処しやがったわ(苦笑) ... とにかくガキの方も、麻衣の策を承知した上でいろいろ出てきているが… 今日の話じゃ、静岡入りする前に例の店へ再度、顔を出してけしかけてくるらしいしな 麻衣がこうも矢継ぎ早だと、大打とかって男も、そろそろツラを出さない訳に行かないだろうよ となると…、婚約披露の前には、麻衣と大打のご対面が済んでいるのか… であれば… ... 「剣崎…、矢島んとこには”雑音”が相変わらずらしいが、俺の方も随分と入ってきてるぞ。ここに来てな」 例のテープの”中身”は、すでに東龍会と星流会に届いている 連中はこっちのシグナルを受け、これ以後の対相和会を巡っては、喧々諤々ってとこだろう 実際に連中が様々な模索を試みているのは間違いないが、あっちサイドはこの局面に至り、ある重要なオプションを取ったと見ている おそらく、東龍会は関東本家に今後の方針を仰いでいるのではないかと… ... これはもはや、そういうレベルにまで我々が追い込んだことを意味する一方で、向こうの出方がどうなるにせよ、その判断は、ワンランク上がった意志に基づくものになったと言える そして、連中はその暗躍のタイミングとして、ここ伊豆での婚約披露の席に焦点を当てている 数日後には、倉橋と麻衣の婚約披露パーティーに出席のため、西からこの業界の大物や重要人物が大挙、参集する 臨席者の多くは、泊りがけで都内や周辺で所用もこなすため、数日行程を組んでいるとのことだ フン…、この機会を関東は逃さないだろう ... 「…今度の集まりを利用して、関東の業界長老やそれなりの影響力を有する人物が、西の連中に接近することになるな。まあ、表向きは共通の知人を介して会ったりだろうが…。淀の御大も、九州が一触即発だし、東との接触は自粛するようにと、暗にほのめかしてくれているが…。関東はあれこれ名目を作って動くぞ」 「はい。今回は我々の立場を更に訴える絶好の場ですから、五島さんらにも、この辺はうまく協力してもらいますんで」 「ああ…、まあその線で大丈夫だろうがな。だがよう、矢島は五島んとこに預けたチンピラへの処置、伊豆が終わった後での方がよかったんじゃねえかって言ってんだろう?例の録音聞いて、かえって奴らを刺激させちまったんじゃってよう…」 「確かに微妙なところですが、こっちの意向はあらかじめ西に刷り込んであるんで、仮に、関東が親交のある関西の組と直に会ったとしても、釈明のニュアンスにならざるを得ないと思うんです。ですから、ここは躊躇わず力押しで通すべきです」 「おお、俺も同感だ。矢島はトップに就いてから、だいぶ神経質になったもんだな。以前はこっちの制止も聞かないイケイケだったのに…。やっぱり立場についたモンの、悲しい性ってもんなんだろうか…」 叔父貴はやや意味ありげな言い回しで、俺の目を一瞬だが、鋭い視線で捕えた 言いたいことは分かっているさ この人は武骨者ではあるが、神経は細やかで、人の心内は敏感に察する切れ者だ ... 間宮を”念入りに尋問した実況中継”のテープは、正直、東龍会というより関東本家を強く刺激したことは否定できない 東龍会の坂内さんは人海戦術では、関東直系有力組織の中でも抜きんでている 俺の見立てでは、もう星流会を差し出すだけで収まりがつかなくなる可能性が出てきたことを恐れ、今の段階で関東本家に申し開きをしたと思う それもトップに直接… そうなりゃ、こっちのことをうまく吹き込める格好のチャンスに早変わりだ フン…、そこであの人が何を言上したか…、だいたいは見当がつくさ ... いずれにしても、麻衣を使った一連の攻め手で、相和会に対しての警戒感を一層募らせたのは間違いのないところだろう それを受けた関東サイドは、婚約披露直後、必ず動く… そして、そこでの”中心”も婚約披露同様、麻衣となる可能性は低くない…
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