赤ずきんとでもいいますか

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赤ずきんとでもいいますか

一生懸命走ってるのに前へ進んでる気がしなかった。歩き慣れた帰り道なのに、景色は違うものに見える。 街灯って、こんなに暗かったっけ。 いつもは気にしてなんかいなかった灯りも、すがり付きたい今日に限って頼りなく感じた。 あまりの恐怖に、走っていた足が縺れた。 小石の多い傷んだアスファルトに、ズザッと身体をずってしまい、剥き出しだった腕と膝に擦り傷を作った。 「あっ」 転んだ拍子に、肩からかけていたバッグが前方に飛び、ポケットに入れていた携帯が飛び出して、数メートル先まで回転しながら滑って行くのが見えた。 「うぅ」 膝を抱えて呻く。痛いがそれどころではない。後ろから忍び寄る気配のほうが今はよっぽど一大事だ。 怖い怖い怖い。 人は身体が竦むと、悲鳴さえあげられないものなのか。 それほど長距離を走った訳ではないのに、息は過呼吸のように乱れて、上手く酸素を取り込めない。   初夏の生ぬるい空気が、余計に肺を苦しく感じさせる。  立とうとしてるのに、身体全体がガクガクと震えて上手く力が入らなかった。
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