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「菅原部長……いい加減にしてください。結人に気安く触れないでください」
低く重い声で牽制をかけた。
「そんなん大槻さんに関係ないやんか。俺はただ橘さんと仲良くなりとうて……」
「それはどういった意味で……でしょうか?」
厳しい双眸を送って即座に問い詰めた。だが、菅原は口角を上げるだけで何も言おうとしない。一哉はそれを「結人への好意」として結び付けた。
「……菅原、お前」
眉間に皺を刻んで睨みつける。
「おーっと、先輩に向かって呼び捨てどころか、お前呼ばわりかいな。そっちが本性ってわけやな」
腕を組んでうんうん頷いたあと、菅原は確信を持ったかのように言い放った。
「……やっぱり、あんたら出来とったんか」
「だったら手出しはやめて頂けますか?」
関係をサラリと認めて、もう一度、釘を刺した。
「否定せーへんねんや。半分カマかけたんやけどなぁ……うーん、非常に残念やわ」
腕を解いてから、菅原は腰に両手をあてて心底ガッカリしたように項垂れた。結人への気持ちが本物だったと知った一哉は改めて忠告する。
「菅原、これ以上に結人に近付いたら、どうなるかわかっているだろうな」
威圧感ある声を放つ。菅原の顔がほんの少し怯んだ。だが、それも一瞬だけのことだ。彼はすぐに、飄々とした表情を見せて夜空に笑い声を響かせた。
「なんやそれ? 脅しのつもりかいな。ほんまに物騒やなぁ……もっと大人にならなあかんで」
菅原が睨みを効かせた。迫力があった。両者の間で見えない火花が散るなか、一哉が口を開いた。
「もしかして同性愛者なのか? それともバイなのか?」
「えらいストレートに聞くなぁ。もっと言葉はオブラートに包んでくれへんと」
「うるさい、答えろ」
先輩だろうが関係ない。結人に対して恋愛感情を抱いているのであれば、早いこと恋心を潰してしまおうと一哉は鋭い口調を放った。
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