※勘違いの顛末(ホワイトデーSS)

16/35

2353人が本棚に入れています
本棚に追加
/486ページ
「んー正直どっちもいけるんや俺は。橘さんは……まあ、せやな。抱けんことないな」  菅原はそう言って、結人に向かって片目を瞑った。 「おい、やめろ!」  まだアプローチするのかと怒鳴った。怒りすら覚えた。感情を表に出す一哉に菅原は呆れたように息を吐いた。 「そんな怒らんといてーな。何もしてへんやん。ここでチュウとかしたら別の話やけど」 「そんなこと、許されるはずもないだろう!」 「わわっ! 大きな声出さんといてーな。おっかないわ。橘さん、こんな短気な男どこがえぇんや」  わざとらく両耳を抑えた菅原が結人へと尋ねた。 「えっと……まぁ、その……」  この状況に理解が追いつていないのか、結人は言葉を詰まらせた。  菅原は言う。 「橘さんに初めて会ってからゲイってのは、すぐにわかったわ。長年の勘やなこれは。しかし、すでに男がおったとは。しかもそれが、この大槻さんかぁ……なかなかの趣味やな」 「なんだと……⁉」  なんて失礼な男だ。吼える一哉に菅原は「冗談やって」と胸の前で両手を振った。 「……ほな、今日のところは諦めて帰るわ。橘さん、書類ありがとうな。助かったわ」 「今日のところはだと⁉」  懲りていないようだ。次は掴みかかる勢いで一歩踏み出した。
/486ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2353人が本棚に入れています
本棚に追加