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「んー正直どっちもいけるんや俺は。橘さんは……まあ、せやな。抱けんことないな」
菅原はそう言って、結人に向かって片目を瞑った。
「おい、やめろ!」
まだアプローチするのかと怒鳴った。怒りすら覚えた。感情を表に出す一哉に菅原は呆れたように息を吐いた。
「そんな怒らんといてーな。何もしてへんやん。ここでチュウとかしたら別の話やけど」
「そんなこと、許されるはずもないだろう!」
「わわっ! 大きな声出さんといてーな。おっかないわ。橘さん、こんな短気な男どこがえぇんや」
わざとらく両耳を抑えた菅原が結人へと尋ねた。
「えっと……まぁ、その……」
この状況に理解が追いつていないのか、結人は言葉を詰まらせた。
菅原は言う。
「橘さんに初めて会ってからゲイってのは、すぐにわかったわ。長年の勘やなこれは。しかし、すでに男がおったとは。しかもそれが、この大槻さんかぁ……なかなかの趣味やな」
「なんだと……⁉」
なんて失礼な男だ。吼える一哉に菅原は「冗談やって」と胸の前で両手を振った。
「……ほな、今日のところは諦めて帰るわ。橘さん、書類ありがとうな。助かったわ」
「今日のところはだと⁉」
懲りていないようだ。次は掴みかかる勢いで一歩踏み出した。
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