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そもそもと、一哉は考える。
この電話は絶対、わざとだ。結人と一哉が一緒にいることをわかっていてコールしてきたのだ。いい根性をしている。菅原なりの宣戦布告なのだろう。
(そっちがその気なら……)
わからせるしかない。一哉はハンドルを切った。マンションへと続くルートを外れて公園の裏手から続く脇道へと入った。鬱蒼とした木々が立ち並ぶ暗い路地へと車輛は侵入する。一哉は側溝ギリギリに車を停めてエンジンを切った。
「あの、菅原さん……俺っ……んぅ!」
結人の言葉が吐息と一緒に途切れた。運転席から身を乗り出した一哉が、噛みつくように口づけたからだ。驚いたのか、結人の手からスマートフォンが離れた。端末は助手席の足元へ落下していった。
『――ん? おーい……橘さーん?』
反応を見せなくなったことを不思議がっているのだろう。菅原が呼びかける。
(結人が誰のものか、わからせてやる……)
嫉妬の業火に身を包まれたというべきか。一哉は唇を重ねたまま、助手席のレバーを引いてシートを倒した。
「――んっ……っんんっ⁉」
突然のグラつきに結人の身体がビクリと震えた。そんな彼に一哉は覆い被さって口づけを深める。薄い唇を舌先で抉じ開けて、口腔を蹂躙した。
「ふ、っんん……」
唾液を流し込み、ねっとりとした摩擦を与えてやると、結人は睫毛を震わせて一哉の背を両手で叩いた。やめてと言っているのだろう。
「結……さっきはごめん、悪かった」
望み通り、唇を解放してから謝った。
「っあ、お願い……ちょっと、待って……」
「待てない。誰よりも愛してる」
「かず……っ、んっぅ……!」
再び声を閉じ込めて、獰猛な動きで舌を突き入れた。弱い舌裏や上顎を徹底的に舐めて、唇からの性感を強めていった。
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