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「ああ、結……可愛い。愛してるよ」
耳朶を優しく食みながら愛を囁くと、結人の身体から力が抜けた。耳は彼の弱い性感帯のひとつだ。それをわかっていて攻めた。
「お願い、待って……せめて帰ってからっ、こんな所で……っ」
それでも結人はなかなか堕ちない。ここでの行為にノーを突きつけてきた。
「帰ってから? 屹立をこんなにしてるくせに、我慢できないだろう?」
ちゅっと、頬に口づけてから雄芯への刺激を続行した。
「ひっ……か、一哉……あっ、あんぅ、ん」
「いい声だ……もっと啼け」
粘ついた水音に合わせるようにして、手の動きを速めていく。
「お願い……このままだと、本当に……っ」
足元に落ちたスマートフォンを気にしがらも、結人は絶頂の気配にわなないた。
「出したらいい……出させてやる」
「あっ、ああ……こんなのダメ……あっ、あ……」
「……大丈夫だ。もう、通話は切れてるよ」
かぶりを振って迫り上がる熱を拒む結人にそっと囁いた。
「えっ……?」
「だからもう、気にしなくていい……悪かった」
意地悪をしすぎたと額をコツンと合わせた。すると――。
「っう……ううっ」
安堵したのか、結人の瞳から大粒の涙が零れた。
「……っ、結⁉」
ギョッとした。まさか泣かれるとは思わなかった。一哉はここにきて罪悪感に駆られた。
「ひ、酷いよ、一哉……」
「すまない……つい、嫉妬してしまった」
我に返って頭を下げた。
悪い癖だ。結人のことになると自分を見失ってしまう。情けない。自己嫌悪に苛まれる一哉の胸に結人は抱き付いた。
「俺はっ、一哉以外、絶対に誰も好きならないよ……っ」
涙声ながらも、確信を秘めた声色だった。
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