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「よう言うわ。聞かせたくせに」
少々呆れ顔で菅原が笑い返す。
「電話を切らなかったのは、そちらでしょう」
射貫くように見据えた。
「まあ、せやな。言うとくけど全部は聞いてへんで。それにしても大槻さん、しつこかったなぁ」
どこまで行為を聞いていたかは知らないが、電話は長いこと繋がっていたようだ。
「褒め言葉として受け止めておこう」
何とでも言えばいい。一哉は勝ち誇ったようにして口端を上げた。
「とにかくラブラブなお二人さんってことはよくわかったわ。ほんまに御馳走様でした」
菅原が距離を詰める。間近で視線がぶつかった。言葉とは裏腹に挑戦的な態度だった。一哉は目を逸らさずに睨みを飛ばした。
「いやー色っぽい声やったなぁ。俺の息子も思わず反応したわ」
行為中の喘ぎを思い返しているのだろう。菅原が瞳を熱っぽくさせた。
「それは申し訳ない。でも、ハッキリとわかったでしょう? 貴方に入る余地はありませんので、結人の事は潔く諦めてもらいたい」
結人の甘い声を聞かせたことは勿体ないが、しょうがない。いかに愛し合っているかをアピールすることが目的だった。一哉に後悔はなかった。忠告を受けた菅原はピクリと片眉を跳ね上げたあと、瞼を蕩けさせる。
「ホンマによかったわぁ……大槻さんの……男らしい声」
「そうですか。俺の声…………はっ?」
この男は今、何を言った?
瞠目する一哉に菅原はニコリを微笑むと……。
「だーかーらぁ、大槻さんの声やん。低くて男らしくて……しかも色っぽくて、たまらんかったわぁ」
両手を組んで悦った。
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