7人が本棚に入れています
本棚に追加
<3・うらめしい。>
おまじないの効果そのものは、覿面だった。
ただ予想外だったのは、あの女が未散が思っていた以上にタフで、同時に周囲がなかなか彼女を見捨てなかったということである。
瞳はあの事件で、額を数針縫う大怪我をした。流石に病院で似たような事件を起こすのは騒ぎが大きくなるだろうと思って自重したが(自分がおまじないで彼女を攻撃しているなどと誰も思わないだろうが、万が一の発覚を恐れたというのもある)、数日退院して戻ってきた直後には再度同じように“攻撃”を仕掛けることに成功している。
顔に傷が残りそうだと聞いても平然と笑っているというのならば、次はその自慢げな運動神経を潰してやろうと思ったのだ。
翌日、彼女は階段から落ちて右足を折り、満足に歩くことができなくなった。ただの骨折なのでどうせすぐに治るのだろうが、それでも大好きな体育の授業に出られなくなるし、女子サッカー部の活動にも出ることができなくなる。ざまあみろ、と思った。運動部の助っ人や、そういう意味で頼られるフシもあった瞳だ。これで少しは落ち込んでくれるに違いないと思ったのである。
だが、実際はそんな甘くはなかった。
「ごめんな、サッカー部なのに足折っちゃってさ」
一日だけ入院して戻ってきた彼女は、すぐに心配するクラスメート達に取り囲まれたのだ。
「というわけで、しばらく練習は見学だ。監督に謝らないと、せっかくレギュラーに選んでくれたってのに。ナアちゃんもミカちゃんも、迷惑かけてほんとごめん」
「そんな、気にすることないよ!瞳ちゃん悪くないって」
「そうだよ、むしろ、私の荷物運び手伝ってくれようとしたせいで階段から落ちたのに……」
「ミカちゃん悪くないって。私が迂闊だっただけだからさー」
顔に傷ができて、足を折って運動神経も生かせなくなって。移動する時も、逐一みんなのサポートが必要な始末なのに――どうして誰も、彼女をうざがる気配がないのか不思議でならなかった。未散は唖然として、仲間達に取り囲まれる少女の姿を見るしかない。
最初のコメントを投稿しよう!