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自分はおまじないの力で、それこそヤスリで削り取るように少しずつ彼女の価値を奪っていっているはずだった。その顔、運動神経、それからメンタル。それなのに何故、彼女は折れるということがないのだろう。ここまで不幸が続けば、彼女自信は自分の価値が何者かに壊されていること、そうでなくても悪いものに取り憑かれているのではということくらいは気づきそうなものだというのに。
――ただ、怪我をさせるだけでは駄目なのかもしれない。
未散は一旦攻撃の手を止めて、瞳の弱点を探り始めた。どんなやり方をすれば瞳が一番傷つくか、彼女が苦しんで目の前から消えるのかをよく考えなければいけないと思ったのである。怪我をさせても価値を奪っても、周囲が甘やかすばかりであるならば何の意味もない。最初こそ、そのうち周りのクラスメート達も足でまといになった彼女に飽きるだろうと思ったが、そんな気配が一切ないのが気にかかるのだ。
なんせ、瞳に気圧されて、取り込まれそうになっている人間は未散の友人達さえ含まれているからである。
「星野のやつ、なんで挫けないんだろ。私だったら、顔に傷残った時点で落ち込んで学校来れなくなるのに……ちょっと凄いよ」
取り巻きの女子のひとりがそんなことを言い始めた時、未散は唖然としたのである。星野瞳うざい、あいつこのクラスからいなくなればいいのに、一番可愛いのは未散なのに――いつもそう言ってくれていたはずの彼女が、だ。
「はあ!?何言ってんの、あんなの強がりに決まってるじゃない。自分が可愛くなくなったのを、どうにか笑顔で誤魔化そうとしてるだけでしょ。怪我した時だって他の人のこと気遣うフリして、点数稼ぎ必死すぎ。まじうっざい!」
「そ、それはそうだけど」
「そこでしおらしく落ち込んでれば、少しは可愛げもあるっていうのに、ちやほやされちゃってさ。ますますあの女の偽善者っぷりが鼻につくわ。何かぎゃふんと言わせてやれるようなことないもんかしら。どうせならもっともっと酷い目に遭えばいいのに!今まで散々人に不快な思いをさせてくれた分の天罰は、きっちり受けてもらわないと!」
「……もう十分、受けてるような気もするけど……」
「はあ!?」
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