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確かに、あのタフなメンタルにドン引きするのはわからないでもない。けれど友人達の間でさえ、そんな意見が出るのが信じられなかった。おまじないを試す前までは、瞳に小さな嫌がらせをやることさえ厭わなかった連中だというのに。
その彼女達さえ、度重なる不幸に見舞われる瞳の様子に驚いて、最近はまるっきり手を出せていない状況である。奇妙なことだ。自分は己が受けた不快感への“正当防衛”で、あいつに正しく“天罰”を下しているだけだというのに。やればやるほど、思い通りにいかないどころか、逆効果を生んでいる気がするのは何故だろう。
ただ怪我をさせるだけでは駄目なのか。今まで手加減して人形に小さな傷しかつけてこなかったが、次はそれこそ失明するとか指がなくなるくらいの怪我を与えてやらなければ意味がないのか――そんなことを考えていた時だ。
「あ、あのさ未散。最近特に、あいつの弱点探すのに必死になってるみたいだけど……」
恐る恐る、と行った様子で友人のひとりが尋ねてくる。
「未散まさか、やってないよね?魔女の部屋の、おまじない。確か、人を呪うようなおまじないもあった気がするんだけど……!」
「!」
そういえば、魔女の部屋、の存在を聞いたのは彼女達からだった。つまり彼女らはあのサイトの存在を、そこに掲載されているおまじないの内容を知っているのだ。勿論そこに人を呪うおまじないがあるからといって、そのサイトを私が知っているからといって、未散が瞳を呪っている犯人だという証拠はそうそう見つけられるものではないが。
「ば、ばっかじゃないの!?何、私が何かやってるっての!?あの女は日頃の行いが悪いせいで天罰が下ったの、それだけでしょ!!」
動揺を、隠しきれた自信はなかった。
瞳のことを一番嫌っているのが誰なのか、なんて明白である。そしておまじないの効果を継続させるためには、人形を肌身離さず持っていなければいけないのだ。
あまりこのおまじないを長引かせるのはまずいかもしれない。早く瞳をこの学校から追い出して、人形を処分してしまわなければ。
未散は少しずつ、焦りを感じるようになっていったのである。
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