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「ふんふーんふーん」
両親が今日はいない日で良かった、と未散は思った。なんせ人形は作る時同様、処分する時も人に見つかってはいけないというルールがあったからである。
呪いがたっぷり染み込んだ人形は、最後は巻きつけたリボン、あるいは布ごと焼き捨てなければいけない。消しゴムを焼くとなれば一見すると非常に難しそうに感じるが、呪いが染みたこの人形は非常に燃えやすくなっているため、家のガスコンロでもなんら問題ないという。
――もう少し傷つけてやってもよかったけど、まああのサイトにもあんまり長引かせるのは良くないって言ってたし。それこそ、不可抗力で傷つくのはまず行って話だから、その前に処分するに限るわよね。
人形の劣化が問題ならば、一度人形を処分したあとでもう一度新しい人形を作って呪ってやればいいだけのこと。そういう意味でも、未散は自分が作った二つの人形を処分するのに躊躇いはなかった。海斗の方は未散を攻撃するために標的にしただけで、本人への恨みはそこまで深くないからというのもあるのだが。
さすがにコンロを使うともなれば、家に家族がいる状況だとなかなか厳しい。今夜両親が旅行で出ているのも何かの天啓かもしれないな、と未散は思っていた。きっと神様が言ってくれているのだ。未散、お前は正しいと。だから自分の背中を押すように、いろいろな物事を動かしてくれたに違いないと。
――ま、あのクソ女も、あれだけズタズタにされたら流石に懲りたでしょ。当分病院から出てこられないはずだし、絶対後遺症も残ってるはずだし、女としてもう使い物にならないでしょ!きっとしょんぼりして、この学校から出てってくれるわよね!
なんなら、そのまま絶望して首でも吊ってくれないだろうか、と思う。
そうすれば、あの女の姿を確実に一生見なくて済むようになるのだから。瞳の信者どもは暫く騒ぐかもしれないが、そんな騒ぎも時期に収まることだろうし何も問題はない。
「ありがとうねーお人形さん達!」
家のコンロに火をつける未散。空焚き防止機能なんて便利なものはついていないから、すぐに火が消えてしまう心配もない。二つの人形を手に取ってにんまりと笑うと、そのまま炎の中に投げ込んだ。
すると、消しゴムでできているはずの人形は一瞬にして溶けるように燃え尽きてしまうことになる。確かにサイトには燃えやすくなっていると書いてあったが、さすがに目の前で見ると驚いてしまった。自分で作ったものでなければ、あれが消しゴムであった事実を疑ってしまうところだ。
――本当に、魔法ってあるのね。
あのWEBサイトのおまじないは、どこまでも本物だったということだ。世の中にはまだまだ自分の知らない不思議なことがたくさんあるのかもしれない、と未散は思う。あのサイトの他のおまじないも、もう少しよく見てみることにしようか――そう思った時、未散の脳裏に蘇ったのは、あの青髪の少年の言葉である。
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