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針で小さく穴を開けただけで、あれだけの傷になったのである。ならば、もう少し大きく傷をつけてやればどれ程の傷を負ってくれるだろうか。
私は白い消ゴムの人形の頭、額くらいの位置にぎぎぎ、と針で浅く傷をつけてみることにした。これだけやれば、額に痕が残るくらいの大きな傷を作ってやれそうである。きっと瞳もしおらしくなることだろう。未散はその瞬間をわくわくと待ちながら、翌日は可能な限り休み時間も瞳のあとをつけて観察するようにしたのである。
事件は、昼休みの時間に起きた。
「うわぁぁぁ!?」
「きゃぁぁぁぁぁぁっ!!」
「な、なんで!?」
ガシャァァン!と凄まじい音が突如として校舎の前から響き渡った。突然校舎前の花壇のあたりに、上からガラスの破片が降ってきたのである。老朽化した三階の窓枠が外れ、窓ごと地面に落下したのだ。直撃を受けた者こそいなかったものの、複数の生徒が割れて飛び散ったガラスの破片を浴びて怪我をすることになった。
あの女、星野瞳もその中の一人である。彼女は破片で額を派手に切ったらしく、痛みに呻いていた。
――あっはっは!ざまぁないわね、血まみれじゃない!あれは何針も縫わないと駄目でしょ、絶対痕が残って不細工になってるわ!!
ああ、愉快愉快愉快!私は木陰からにやにやしながら様子を見ていた。痛みと絶望で泣き叫べクソ女――そう呪詛を心の中で吐き散らかしていた、その時である。
「ってぇ……だ、大丈夫か、お前!」
――……え?
彼女は自分の傷に構わず、近くで同じようにして巻き込まれた後輩の元に駆け寄ったのだった。一緒に歩いていた様子からして、友人か知り合いであったのだろう。一年生らしきその少女は派手に足を切ってきまったらしく、泣きながら痛い痛いと嘆いている。
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