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「誰か、救急車呼んでくれないか!……ユナちゃん、大丈夫だからな。見た目ほど酷い傷じゃない。止血すれば大丈夫だから落ち着け、な?」
「ほ、星野せんぱ……っ」
「大丈夫!私がついてるからな!」
自分も額から酷く流血しているのに、彼女は後輩の傷にハンカチを巻き、慰めの言葉をかけている。そして次には同じように腕を押さえて踞っていた男子生徒のところに駆け寄っていた。心配するな、すぐに助けが来るから、ということを繰り返し言っている。その様子を見て、呆然としていた無傷の者達が救急車を呼ぶなり、先生を探しに行くなりと動き始めたのだった。
納得がいかないのは、未散だ。
顔に傷がついた。瞳だって女の子だ、自分の美貌をひらけかして男たちにちやほやされているのだから、顔が傷ついて平気であるはずがない。それなのにどうして、あんな怪我をして平気な顔をしていられるのか。自分より、同じように巻き込まれた他人を気遣えるのか。
――こんなところまで、いい人ぶりたいっての!?どんだけポイント稼ぎたいのよ……偽善者!
「ひ、瞳ちゃん!あ、頭に怪我して……!」
「大丈夫!ちょっとクラクラしてきたけど!」
「それ全然大丈夫じゃないよ!ほら、瞳ちゃんも手当てしないと……!」
笑ってひらひらと手を振る瞳を心配して駆け寄っていく、彼女のクラスメートの女子たちや部活の後輩らしき者達。忌々しい、と未散は舌打ちした。お前たちの眼は節穴なのか。なんでそいつの偽善ぶった仮面を見抜けないのか。
――失明させたらまずいかも、なんて思うんじゃなかった!もっと、もっと大きな傷を負わせないとこいつを苦しめることはできないんだわ……!!
じりじりと焼き焦がされるような、不快な感情。
予定を変更しなければならない、そう思った。彼女をもっともっと苦しめる方法を、次の“攻撃”では考えなければなるまい、と。
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