銀との生活

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「葵様、兄者がこの石に戻って、本格的に眠ると 次は、至宝様くらいの強い力を持った者にしか、呼び出せません 今からの時代の人に、そんな力を持つ方は、出て来ないと思います そうなれば、私達は、もう二度と、この世には出て来れ無いでしょう お願いします、もう少し兄者と一緒に居させて下さい」銀はそう願う。 「そうなの、そういう事なら、急いでこの石に戻る事も無いわね 皆で一緒に暮らしましょう」「本当ですか?」「有難う御座います」 二人は大喜びで、葵に礼を言い 「兄者、良かったなぁ」「ああ、銀と一緒に暮らせるなんて、夢の様だ」 金と銀は、まるで零れる花の様な笑顔になった。 ああ、なんて綺麗な笑顔、二人の顔を写真に撮られて ネットにでも上げられたら、たちまち大騒ぎになりそうだ。 うまく隠せて暮らせるか、心配だったが、今の葵には この二人に居て欲しいと言う気持ちが強かった。 そんな葵の顔に気付いた金は「葵様、食い扶持の事なら心配要りませんぞ 山で、猪か鹿を獲って参ります」と、銀と同じ事を言ったので 葵は、吹き出してしまった。 「兄者、今の世では、そういう事は出来ぬそうじゃ」銀が慌てて教える 「そう言う事は、心配しなくて良いわ、今の私は ちょっとお金持ちだから」そう聞いた金は、ほっとした顔になった。 「じゃ、帰りましょう」葵は、バックから新しいマスクを取り出して 二人に渡し、自分も掛けた。 「葵様、いったい何枚持っているのです?」銀がそう聞く。 「いつも、10枚入りの袋を、バックに入れているわ 出掛けてから、忘れたって時も有るからね」 「前のでは、いけないのですか?」と、金が聞く。 「ええ、もう黴菌が付いて居るから、外したら、新しい物にしたいの」 病院へ勤めていた葵は、そういう所は潔癖だった。 京都まで戻り、駅の構内で買い物をして、新幹線に乗る。 金は、銀と全く同じ反応をして、葵を笑わせ、初めて見る富士山に 「絵巻物や、草紙では、見た事が有りますが 本物の富士様は、迫力がまるで違いますね~」と、大感激した。 家に帰りつき、駅の構内で買った、各地の有名な駅弁と 京都の名物のお漬物で、夕食にする。 「牡蠣ご飯、とっても美味しいです」「このご飯の上に乗っている肉は 何の肉ですか?美味しいですね~」「焼いた、鯖のお寿司?これも旨い」 「この丸いのは、シュウマイって言うんですか?また違う美味しさです」 等と言いながら、三人は、全ての弁当を分け合って、色々な味を楽しんだ 「今の世には、信じられない程、美味しい物が こんなに沢山有るんですね」金は、食後のお茶を飲みながら 大きくなったお腹をさすった。 その後で、銀と共に、風呂に入った金は「何で湯が出るんだ?」とか 「うわぁ~泡だらけだ」と、騒ぎながらも、ホカホカになって 風呂から出たが、銀がドライヤーで髪を乾かしてやろうとすると また、大きな驚きの声を上げた。 「うふふ、双子だけ有って、銀の時と、全く同じだわ」 葵は、仲良く髪をブラッシングし合っている二人を見て、笑顔になる。 葵も風呂を済ませ「明日は、兄者の服を買いに行こうね」と、提案すると 「葵様まで、兄者と言うのですか?」銀がそう聞く。 「良いじゃない、本当の歳は、私より、う~んと多いんだもの」 「私は、どの様に呼ばれようと、一向にかまいませんが」 金がそう言った時「あっ」二人は、同時に立ちあがった。 「葵様、怨霊ですっ」銀が叫び、金は、葵を後ろに庇った。 「ええいっ」銀がそう叫んで、立てた中指と人差し指で空を切ると この前と同じ様な、黒い影が見えた。 銀が、鉄扇でその影を打ち砕き、扇を広げて 「怨霊め、去れっ」と扇ぐと、影は、すべて消えた。 「この前のと同じね」葵がそう言うと 「葵様、誰に恨まれておいでなのですか?」と、金が聞く。 「それが、全く心当たりが無いの、病院を辞めてからは 一緒に遊ぶ友達も居なかったし」唯一の心当たりは、一郎の母だが 今は、一郎を取り返したと、喜んでいる筈だ、恨まれる事は無い。
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