クマゼミとミンミンゼミ

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クマゼミとミンミンゼミ

 この木の上にびっしりついている蝉は……そう、クマゼミだね。この辺りでは多い蝉だ。黒いずんぐり頭と透明な羽を彩る緑のし脈が僕は好きなんだ。  実は日本で一番大きな蝉なんだよ。すごいだろう?  上の方を見てごらん。クマゼミに交ざってアブラゼミがいる。あいつには、よくおしっこをシャッと掛けられた。  ニイニイゼミはいないかなぁ。  知らないかい?   ニイニイゼミはクマゼミやアブラゼミより一回り小さくて、くすんだグレーに複雑な模様が入っているんだ。木の幹そっくりに擬態する名人で、僕は忍者と呼んでいた。  初めて捕まえたときは嬉しくて家に持ち帰ったんだけど、しばらくしたら「チィー」と甲高く鳴き出してね。  母に「近所迷惑だから逃がしなさい」と叱られた。  いい質問だね。  蝉が小さな体で、これほど大きく鳴けるのは体の内側に秘密があるんだ。このクマゼミの死骸を失敬してお腹の内側を見てみようか。  そう。空っぽだね。
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