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莉子 よん
なんだか最近しゅんとの距離が、
ますます近づいた気がする。
なんだか特別扱いされてる気がして嬉しい。
でもなんだかしゅんの目は私だけじゃなくて、
私をとおして違う何かを見ているような気がしてしまう。
私いつからしゅんを恋愛の対象として見ているんだろう?
欲張りになって、
しゅんの視線の中に無理矢理にでも入り込む。
私の髪を指に絡めながら、
私の好きな歌を歌いながら、
時折外れるしゅんの視線。
ぎゅっと胸が締め付けられる。
その声に、その香りに、その笑顔に、抱きしめて欲しい。
もっと触れて欲しいと思う。
前よりも吸い込まれるように、
しゅんの歌や話に聞き入ってしまう。
しゅんにお手伝いを頼まれるのが嬉しくて仕方ない。
しゅんが早く帰ると言う日に、
央人たちに飲みに誘われた。
その日は央人のペースが早くそうそうにつぶれた。
央人の友だちは一緒にいた女の子を送るようだし、
何より央人が
「莉子 送ってぇ」
と甘えて来て離れない。
「莉子ちゃんごめんね💦」
と男友達と彼に絡み付いた女の子は、
近くのネオンに溶けて行った。
あぁそういうことか。
私は仕方なく央人を立たせて店を出た。
わりとしっかり歩けてるし、
そこまでだめになってない。
むしろちゃんとしてる気がする。
近距離タクシーでちょっと嫌な顔されたけど、
おかげですぐに央人の部屋につく。
「ちゃんと部屋まで」
とせがむ央人はなんだか可愛い。
こういうとこもモテる要素なのかも。
渡された鍵を開けて部屋に入る。
「ちゃんとベッドで寝てね」
そう言って振り替えって部屋を出ようとすると、
背後で央人が立ち上がる気配がした。
玄関のドアノブに手をかけた私の背後から、
央人の腕が伸びてきて—。
ガチャ…。
玄関に鍵がかけられた。
どんっという音がして、
私は玄関ドアと央人に挟まれる。
壁‥どん‥?!
ドラマでしか見たことないシュチュエーションに心拍数があがる。
すぐに反対の腕が私の体を抱きしめた。
「央人?」
「帰らないで」
央人のこえが耳元に熱く響く。
一瞬。
私の心にしゅんのことが浮かんだ。
でも、央人の唇が私の首筋に熱を残したことで、
しゅんのことは吹っ飛んだ。
振り向いてぶつかった央人の瞳に、
何とも言えない複雑な気持ちが沸き上がってきた。
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