しゅん よん

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しゅん よん

央人はいいやつだ。 男にももてる。 ここにくる子は男でも女でも、 央人の友だちや昔の女だったり、 そうでなくても央人とすぐになかよくなっていた。 もちろん俺をあてにして集まってくれてるやつが多いし、 莉子だってその1人だ。 俺と央人も仲良くなるのに時間はかからなかった。 央人もそのツラの良さで苦労はしたみたいだけど、 それを武器に変えるすべを身につけていた。 男から見ても“カッコいい”。 そんな央人に小さな嫉妬心を芽生えさせたのはいつだったか? くだらない気持ちだと蹴飛ばしておけばよかったのにと思う。 そのせいでもしかしたら、 関係ない莉子を俺は道具のように使って傷つけてしまう。 でもきっかけは莉子だったのかも。 あんなに陶酔して俺を見ている莉子が、 あっさりと央人の手中に引きずり込まれた気がした。 そりゃ莉子は彼女じゃないし、 そんなに好きならちゃんと囲っとけって話だけど、 そういう訳でもなかった。 だから莉子が央人とどうなろうが、 俺に何かを言える権限はない。 わかってるけど自分でも説明できない嫉妬が、 大きく大きく育ってしまった。 ましてや莉子の方からではなく、 央人の方からアクションをおこしているとなれば、 この嫉妬心を浄化するのにもってこいだとか思ってしまう。 浅ましい自分に驚きながら、 いろいろ言い訳をして莉子の気持ちに揺さぶりをかけてしまう。 陰キャの極みだな。 気持ち悪い、と自分で笑ってしまう。 俺だってわりとモテるほうだ。 莉子は俺のボディータッチを嫌がらないし、 むしろ嬉しそうに目を細めて受け入れる。  可愛いとは素直に思う。 もう付き合ってるってくらい俺たちの距離は近い。 そんなことを考えていたある日。 莉子は来なかった。 でも、お開きにしてみんな散っていったあと—  「しゅん!」 と息を切らせて莉子がきた。
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