莉子 ご

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莉子 ご

残業した。 そのあと会社の人に誘われて何人かでご飯を食べた。 解散した後そのうちの1人にホテルに誘われる。 そういうので有名な人だとうわさに聞いていたから、 警戒してたしなるべく人の多い通りを選んで歩いた。 それが功を奏してネオン街にひきづりこまれずに済んだ。 なんとかやんわり断って走った。 追ってはこない。 あぁ月曜日いやだなぁと憂鬱になる。 なんだか無性にしゅんに会いたくなった。 そのまま走って広場に行くともう明かりは消えていた。 ちょっとがっかりしたけど、 暗闇の中にしゅんをみつけてうれしくなった。 「しゅん!」 思わず叫んで駆け寄る。 「おぉ莉子。今日はもうみんな帰ったよ」 と辺りを見回す。 「うん」 そう言って黙っていると、 「俺んちで一曲ひいてやるからおいで」 としゅんが頭ポンポンしてくれた。 「‥いいの?」 嬉しくて聞き返す。 「莉子ならいいよ」 おいで、とゆっくりと差し出されたしゅんの手を握る。 初めて行くしゅんの家。 ちいさいけどおしゃれなしゅんらしい暖かい雰囲気の部屋に、 心踊らせてしまう。 憧れの人の家ということも相まってふわふわしてしまう。 「座って」 とおしゃれなソファに促される。 目の前のテーブルには缶のカクテルがおかれて、 「どうぞ」 と言いながらしゅんも自分の分を開けて一口飲んでいた。 そしてギターを持って私の横に座り、 約束通り一曲弾いてくれる。 「莉子だけに」 と言いながら唄うしゅんの声は、 脳にも心にも染み込んで私を甘く溶かして行く。 弾き終わるとギターをおいて、 「どう? ワンマンだね」 といつもより優しく笑いかけられる。 「最高!嫌なこと全部ふっとんだ」 そういうとしゅんは真剣な顔で私を見つめた。 思わず息を飲む  「しゅん?」 と尋ねる私の肩にしゅんのて手が置かれる。 そしてゆっくりと近づき—  -唇が重なる- たったそれだけのこと。 触れあっただけなのにもう何も考えられない。 視線が泳ぐ。 「ふふ 可愛い」 としゅんに抱きしめられる。 「莉子 いいよね?」 と頭の上から落ちてくるしゅんの言葉に、 腕の中で小さくうなずく。 優しく暖かく。 しゅんに抱かれて私は魔法にかけられて—。 少し浮かれ過ぎていた。 
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