央人 ご

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央人 ご

明らかに違う。 昨日莉子はしゅんのところにいなかった。 そんなことは珍しくない。 俺も広場(ここ)来ない日だってある。 なのに—。 莉子の様子は明らかに前と変わっていて、 雰囲気もすごいいい。 でもしゅんは逆にこわばっていて、 声にも艶がない。 「ねぇ莉子さぁ彼氏でもできたのかなぁ?」 といつも来てる女の子が俺に聞いてきた。 やっぱり他の子にもわかるよね。 全然ちがう。 「あぁ そうかもね なんか違うよね」 俺も軽く返す。 女の子たちは『聞いてみる?』とかわちゃわちゃ話してる。 「莉子ってさ、不思議な雰囲気だけど憎めないっていうかさぁ」 「そうそう、なんかかまいたくなっちゃう?」 「ああいう子ってどんな人と付き合うのか、 気になるっちぁ気になるよね?」 女の子たちの会話に耳をかたむけながら、 チクチクする胸の痛みをなんとかごまかそうとする。  どうせ“しゅん”だ。 しゅんと何かあった。 あんな風に莉子を変えさせるなんて、 しゅん以外考えられない。 わかってる、わかってるよっ! 無性にイライラする。 「ガールズトークできいてきたら?」 イライラにまかせてと彼女たちを焚き付ける。 あのしゅんの態度も気になる。 するとたまたま莉子がこちらにくる。 冷蔵庫の飲み物をとりにきたようだ。 「お疲れさま」 と俺ら全員に笑いかけてきた。  「おつかれぇ」「おつ」みんな口々に莉子に答える。 莉子は冷蔵庫からお茶を出す。 「今日は飲まないの?」 誰かが聞くと 「うん 明日仕事でなきゃだから」 真面目な莉子らしい。 「ねぇ莉子?」 女の子たちはみんなで莉子を囲むように座ると、 「もしかして、彼氏出来た?」 とストレートに聞く。 思わず聞き耳を立ててしまう。 少しはにかんだように笑った莉子からは予想と違う言葉がでてきた。 「出来てないよ」 その答えにほっとするけど…。でもじゃぁ、その顔はなんなんだ? 「ただね ちょっといいことはあったかな」 俺の疑問に答えるようにそう言うと、 莉子は逃げるように微笑みながらしゅんの歌を聴きに行く。 「えぇ何々 気になるぅ?」 と言いながらもそれ以上深追いしない女たちを横目に、 莉子としゅんの様子をうかがい続けてしまう
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