莉子 ろく

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莉子 ろく

しゅんと寝た。 最高に幸せだった。 央人とのことダイレクトに聞かれたのにはかなり驚いた。 でももう気づかれている。 もうこれきりかもって思ったから素直に答えることを選んだ。  「しゅんがいい」 と言ったら驚いたことにしゅんはたくさん愛して可愛がってくれた。 ほんとに夢のような時間だった。  でも次の日からしゅんとの間に距離をかんじるようになった。 はじめは気のせいかと思ったけど、 日がたつに連れてますます距離は広がっている。 悲しくなったけど、 考えたら私たちは付き合ってるわけでもない。 ましてや、私が央人と寝たことも、 しゅんは知ってしまっている。 冷静に考えたらそんな女は無理だと思われても仕方ない。 でもしゅんをたくさん知ってしまった私の心は、 まだ希望を捨てきれなくて、 少しでもしゅんの近くにいたいと思ってしまう。 そして気づいてしまう。 しゅんが私をうざいと感じていることに‥。 しゅんと寝てから半年が過ぎていた。 諦め切れない私はまだしゅんのところへ行ってしまう。 もう最近はしゅんと話してもいないのに‥‥。 「莉子」 こんなときに限って央人に声をかけられる。 『しゅんだったら』って思う。 でも、やさしい央人の声や笑顔を見ると、 そんなふうに思う自分に罪悪感を覚える。 央人の声や笑顔は暖かく私のからだに染み込んでくるから、 余計につらい。  「良かったら来週ランチ来ない?」 そういえば央人は昼間レストランで働いていることがある、 と誰かが言っていた。 「‥‥」 嬉しいお誘いだ。 でも今の私は考えこんでしまう。 「なんかさ、ここ半年くらい、莉子ちゃんと食べてる?」 あぁ、そうだ、央人は周りをきちんとみてくれる人だった。 まったく食欲がないわけではないけど、 食事にこだわりはなくなってはいた。 「まぁ 食べてはいるけど」 「そお?」 央人は私の顔を覗き込んで 「じゃ 俺に付き合ってよ 飯」 とにっこり笑う。 「ここんとこさ。俺も1人飯多くてさ。 誰かと食べたら絶対その方がうまいんだけどさ」 「なぜ私?」 「昼間時間あるっしょ?2時とか」 まぁ、私の仕事は時間はどうとでもなることが多い。 前に央人にも話したかなぁ? 「それに莉子だと気ぃ使わなくていいっしょ?」 と舌を出してイタズラに笑う。 「失礼だね」 そんな央人につられて私もわらってしまう。 まぁ私もいい気晴らしになるよね。 私は央人の優しさに甘えることにした。
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