莉子と央人

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帰り道— 少し前を歩く央人をじっと見つめてしまう。 触れたい—。 そんな衝動で気づいたら両、 手で央人の手を捕まえてた。 「え?」 央人の驚いた声でハッとする。  「あっごめん」 あわてて離そうとしたら、 強く握り返される。 そのまま手を繋いで、央人はマンションまで無言で歩く。 そのスピードのせいだけじゃないドキドキで、 体が熱くなる。  玄関入って手が離される。 急になくなった暖かさに寂しくなってしまう。 靴もぬがないで、その場に立ったまま自分の手を見つめる。  止まった私に気づいて、 央人が玄関に引き返してくる。 目線を私に合わせて、 「どうした?」 と聞いてくる。 どうしよう。 央人の瞳に釘付けになる。 しゅんの言葉がよみがえる。 『こんなチャンスめったにない』 確かに。 今が私にとってのなのかもしれない。 見ればみるほど綺麗な顔。 顔だけじゃない。 瞳も、鼻筋も、ほほも、髪の毛も、手も…。 どれも吸い込まれそうで、 触れてみたくなってしまう。 どうしたんだろう私。 央人の全部にドキドキする。 思わず央人の頬に両手をあてて、 吸い込まれるように央人の唇に自分のを重ねていた。 少しぴくッとしたけど央人はされるがままだ。 いいの? 唇を離したあとも視線が離せない。  「莉子」 央人がようやく口を開く。 「いいの?」 かすれた声でそう聞いてきた央人の、 その言葉の意味が分からないほど子供じゃない。 前にも一回央人としたけど、 今度は意味が違ってくるってのもわかってる。 頭ではわかってるのに、体はこわばってしまう。 怖いからでもいやだからでもない。 —央人のことが好きだから—。 「莉子?」 切な気な央人の声と表情を愛おしく思った。 央人の全部にドキドキするし、 もう私…、央人しか見えてない。 こくりとしっかりうなずく。 と、同時にふわっと体が浮いて、 私はそのまま寝室に運ばれる。 びっくりするくらい優しくベッドにおろされる。 「莉子、」 いつになく真剣なまなざしの央人に、 顔はどんどん熱くなるのがわかる。 「俺の彼女になってください」 央人の両手にほほを包まれて、 央人に見下ろされるように形で告白される。 優しく言われてるのに緊張でうまく声が出ない。  「ダメ?」 そう聞いてくる央人は、 言葉とは裏腹に自信に満ちている。 「もう…。私の答えなんかわかってるくせに」 笑いをこらえながら答える。 「でも班と聞きたい。莉子の声で」 「私 央人が好き」 私のその言葉を聞いて、 央人は解けそうなくらい、 めい一杯の笑顔でを見せてくれた。 「央人の彼女になりたい…。彼女にしてください」 ふわっと央人が降ってきた。 からだの隅々まで央人が染み込んで来たように感じた。 「いいよ」 耳元でそっとささやかれて—思う。 あぁ一番心地よい声だ。 「莉子…大好き」 私が一番安心できる声が私の名前を呼んだ。 
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