しゅん いち

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しゅん いち

この広場に俺の歌を聴きに集まってくる子達と、 いつの間にか仲良くなって、 みんな居座るようになったから、 気になってたちいさな広場を買い取った。 いや、『買わされた』が正解かな? 売り手側も手放したかったから格安だったし、 周りは店舗ばかりで民家もないから、 少し騒いでも平気そうだし、 家賃払うよりいいかも、とおもったしね。 何よりここで過ごす時間は心地よかった。 知り合った子たちと過ごす居場所としてはいい買い物だった。 そんな広場にいつの間にか来ていた莉子は、 初め無表情で俺の歌を聞いていた。 ホントにすみっこで、いることさえ気づかないこともある、 空気みたいな子だった。 ただ居場所がなくてここへ来て、 なんとなく俺の歌を聴いているように見えた。 いつも1人だけど人を遠ざけてる感じもなかった。 そんな莉子のことがなんとなく目にとまった。 初めて話したときはその熱量に驚いた。 かなり俺の声に惚れ込んで、 だいぶ真剣に俺の歌に耳を傾けてくれていたことがわかったから。 ホントそんなふうには見えなかった。 聞き流してるだけなのかってくらい無感情に見えてたから。 『莉子ちゃん、しゅんのこと好きなんじゃね?』 と 友だちは言う。 けどそれはないと思う。 でも俺の友だちをそう思わせるほど、 俺の歌について熱弁する莉子は、 陶酔した話しぶりだった。 確かに味方によっては、 ものすごくうっとりと俺の歌を聴いてくれているようにも見える。 ある日から、俺が莉子を見ていると、 央人の視線が入り込んで来ることが多いことに気付いた。 まさかあの人たらしのイケメンが、 陰キャ代表みたいな子に手を出すとは考えずらい。 でも、央人の態度は何かあったかな? と思わせるような雰囲気があった。 それにしては莉子は何も変わらないし…。 脳がバグるような感覚を覚えていた。
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