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央人 に
昼飯をしゅんと食べようと思って広場へ行く。
少し離れたところでしゅんの話し声が聞こえて足を止める。
こんな早い時間に誰かいるのかな?
しゅんの影になって相手は見えない。
けど確実に誰かと話してるっぽい。
少し近づくと風になびく髪の後ろ姿が見える。
女だ—。
なにやら楽しそうだから引き返そうとした時、
女の子の声が耳に入る。
そしてすぐに気づく—莉子だ—。
楽しそうに話している2人が見える。
2人が付き合っているとかそんな話は聞いたことないけど、
“もしかしたら”って思わせるような空気感で近寄りがたい。
だったら2人きりにさせてあげるのがベストなのはわかりきってる。
でもなぜか俺はそれが出来なかった。
別に2人の秘密を握った訳でもないし、
ゴシップ的に覗きみたい訳じゃない。
そうじゃなくて、なんだかモヤモヤしてイラついた。
俺と寝たばかりなのに…。
いやいやそんなこと気にする俺じゃないだろう?
他の男にしっぽ振ってる莉子を軽蔑したいわけじゃない。
一度寝ただけだ。
やるだけで終わる女なんかいっぱいいたし。
俺も莉子が後腐れなくて安心したはず。
なのに…莉子の表情や仕草や視線に苛立ちがつのる。
いつもと変わらない広場。
ただしゅんと莉子が2人きりにというだけ。
けど…。
けど今の莉子がしゅんのためだけに存在していると思うと、
声を掛けられずに来た道を引き返してしまった。
その日から俺は、
莉子のしゅんを見る目が気になってしまった。
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