莉子 さん

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莉子 さん

しゅんに聞かれて、 わざと核心をずらした返事をした。 『央人となんかあったの?』 別に『寝た』と言っても、 しゅんは驚きはしても軽蔑しないだろう。 私たちの関係もかわらないと思う。 思うけど‥。 なんとなく言わなかった。 少しの沈黙のあいだにわかってしまった。 たぶんしゅんは私と央人の間に何かあったこと、 ちゃんとわかってる。 そして私は、しゅんにそれを知られたくないんだ。 私がしゅんの知ってる誰かに体を許したことを知られたくない。 どうしてそう思うのかはっきりはわからない。 央人に遊ばれたと思われるのが嫌なのか、 軽いと思われることへの怖さからか、 しいては、しゅんが好きだから‥なのか。 軽く流しながらしゅんの様子を伺ってしまう。 しゅんはそれ以上詮索しなかったし、 私も話題をすり替えた。 すぐにまた普通の会話に戻り、 いつもの空気感も戻ってくる。 ただいつもより少し、 しゅんからのボディータッチが多くなったように思えた。 少し意識してしまったせいか、 しゅんに触れられることは心地よさだけでなく、 ドキドキが加わってしまった。 もっと猫みたいにすり寄れたら幸せなのに、 とか考えてしまった。 それはだめ! そういうのは彼女にならないとだめ! しゅんは央人とは違う気がして、 やっぱり軽く見られたくなくて気を引き締める。
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