央人 さん

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央人 さん

「ねぇ今日飲み行かない?」 しゅんのところでたまってる女が声をかけてきた。 今日はしゅんが早く帰るらしい。 明日早くから用事があるようだ。 莉子の方を見ると、 何やらしゅんと話している。 しゅんが莉子に耳打ちして笑いあっている。 なんかモヤモヤする。 「いいよ。行こう」 大人げないなと思いながら、 声をかけてきてくれた彼女に笑顔で答える。  「どこいくの?」 そんな俺らの会話に、 近くにいた男友達が入ってきた。 「いいとこ」 女と2人で飲もうとしてた俺ははぐらかす。 でも女は 「飲み足りないから飲みに行くのぉ。一緒に行く?」 とか言い出した。 内心『なんだよ』とか思いつつ。 ちょっと安心する。 このままだったら、抱きたくもない女を抱くことになっていた。 正直、今莉子じゃない女と、 楽しめる感じじゃないのは自分でもなんとなくわかってた。 「行く行く」 男友達はかなり乗り気で女の肩を抱いた。 そこへ莉子が近づいてきた。 「あ、莉子ちゃん暇?」 こともあろうか男友達は莉子に声をかけた。 ちょっと焦ったが何事もないように俺も莉子に笑いかけた。 「今から飲み直すんだけど莉子ちゃんも行ける?」 今度は女が莉子を誘った。 莉子は一瞬俺を見た。 俺の様子をうかがっているようだ。 俺は笑って小さく頷いた。 「よかったら ね 」 と言葉も添えた。 「うん 行く」 莉子は嬉しそうに頷いた。 すると男友達は  「よっしゃ じゃ 行こうぜ」 と莉子の肩もくんだ。 その瞬間かなり俺の中でイライラが大きくなった。 でも俺はさりげなく莉子の肩からやつの手を外して、 俺の方に引き寄せて腰を抱く。 「なにすんだよぉ」 とかやつは言ったけど 「両手はずるいっしょ? 俺だって女の子と歩きたいもーん」 といって莉子をつれて歩きだした。 「お前いつも女の子独り占めしてるのによくゆーよ」 男友達はそう言いつつ笑っている。 その日は酔いの回りが早く。 俺は莉子に支えられながら家に帰った。
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