第7話:手紙

3/4
前へ
/23ページ
次へ
「なんだか、久美子らしいな…。」 笑いながらも、涙が止まらなかった。 そうだ。久美子はいつもこんな風に、まっすぐでお茶目な所のある子だった。 俺がうまく行かなくて勝手にイライラしている時も、冗談を言って和ませてくれたし、一緒に笑った思い出ばかりが甦る。 青空のような水色の便箋に並ぶ、久美子の丁寧だけど力強さを感じる文字。 久美子の心も、この青空のように、澄みきってどこまでも広かった。 いつも俺は、見えない何かや誰かと戦っていた。 自分が一番でないといけないと思っていた。今でもそうだ。 それをつかの間、忘れさせてくれたのが久美子だった。 俺が久美子の人生に影響を与えたなんて、そんな大層なことはひとつもできていない。 俺が、久美子からたくさんの良い影響をもらっていたのだ。 今更気づいたよ。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加