シーズン1【草凪 春太】

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「『今日最も良い運勢なのは、おうし座のあなた。新しい恋が始まる予感。何事にも積極的に参加しましょう』」  浮かれた新入生が陽気に騒ぐ食堂内。すでに食事を終えた友人の藤井 拓哉(フジイ タクヤ)が、スマホの画面を見ながら朗読する。その声は感情の起伏が見られずに、もはやこの現状を打破する為に占いといったスピリチュアルなものに縋っているようにも捉えられる。  俺は、冷めた目で彼を見る。 「なーにが『新しい恋が始まる予感』だ」  俺は投げやりに呟く。不貞腐れた俺を前に、拓哉は小さく息を吐く。 「春太。もう二週間も前だろ。そろそろ切り替えろよ」 「俺は一途なんだよ」 「それが重いから、今こうなってんだろ」  拓哉はピシャリと言い放つ。ぐうの音も出ない。    二週間前の三月中旬。高校の卒業式が済み、友人との決別式とも呼べる集会も落ち着いた頃だ。  高校二年の春から付き合っていた彼女に振られた。  原因は、俺の余計な一言のせいだった。 「もう……死にたい……」  俺は机に突っ伏す。昼食用に注文したカレーはまだ半分以上も残っているが、すでに冷めているのでもう手を付ける気にもなれない。 「はいはい、聞き飽きた。ほら、占いも言ってんだろ。何事にも積極的に参加しろって」  そう言うと、拓哉は勧誘チラシの山から一枚手に取り、俺に向ける。  視線を向けると、そこには大きく『新入生歓迎コンパ』と書かれていた。 「大学一回生の春なんて、出会いが一番ある時期じゃねーか。しかも、新入生はタダ。行くしかねーだろ」拓哉は嬉々として語る。 「気分にならねー……」と顔を背けると、何気なく視界に入った光景に目を見張る。
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