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きっと幸せを願ってるよ
「丹羽に彼女ができたって言ってるだろ? もう諦めろって」
そう言って幼馴染の翔はベッドで寝転んでスマートフォンを握る私の足元に腰かける。
「そんな傷つくようなことを教えに来ないでよ……」
翔はわざわざ仕事帰りに私の家に寄って、元カレの丹羽くんに新しい彼女ができたと報告に来たのだ。
「ならいい加減吹っ切ったら? 香菜も新しい相手見つけろよ」
言われなくたって分かってる。もう丹羽くんは私のことなんて綺麗さっぱり忘れて新しい彼女と新しい恋愛を始めている。
それなのに私は未だに丹羽くんの連絡先を消せない。いつまでもLINEのトークを眺めるし、SNSのアカウントをフォローしている。丹羽くんが何も投稿していない幽霊アカウントだとしても。
スマートフォンが鳴る度に丹羽くんからの連絡ではないかと期待してしまう。
「マジで気持ち悪いよ。いつまでも未練タラタラで、別れてどれだけたってると思ってるんだよ?」
「1年……ちなみに今日が記念日だったの……」
「知ってるよ。別れた日のだろ? だから今日来たんだよ」
「別れた日じゃなくて付き合った記念日!」
「そっちの記憶にしてるってキモッ」
翔に呆れられて涙目になる。
私は丹羽くんに付き合った記念日に別れ話をされた。
『別れた日』を『付き合った日』で上書きしたっていいじゃない。好きで好きで堪らなかったんだから。1年たった今でも振られて落ち込んでいるし、忘れられない。
翔に会社の後輩だという丹羽くんを紹介されて一目惚れした。
年下だけど大人びていて、気が強いところもあるけど真面目な彼に惹かれた。
付き合い始めて、一緒に住んで、年齢的にも結婚を考えていたのに別れ話をされた。
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