きっと幸せを願ってるよ

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「っ……」 思い出したら涙が出てきた。 起き上がってテーブルに置いたティッシュ箱からティッシュを1枚取ると鼻をかんだ。 「はぁ……」 横に座った翔が溜め息をついた。 「丹羽に対するその熱意をどうして新しい恋愛にぶつけようとは思わないの?」 「だって……まだ好きなんだもん……」 「香菜さ、そういうとこが振られた原因だって気づいてるんだろ?」 さらに涙が溢れる。 愛情が重すぎると言われた。 仕事柄季節のイベントになると家にすら帰ってこないことがある丹羽くんにもっと構ってほしいとワガママを言った。忙しいことは分かってはいても、私の方が好きの気持ちが大きいことが不安だった。 丹羽くんに呆れられ、私への気持ちが一切なくなったと言われて、みっともなく泣いて縋った。「ごめんなさい」と何度も繰り返し伝えても、彼は私とやり直そうとはしてくれなかった。 どんどん鬱陶しがられてきたのが分かったから離れるしかなくなった。これ以上嫌われたくなかった。 いつか元に戻れるんじゃないかと思っていたのに、別れて1年で新しい彼女って早すぎないか。 「丹羽の新しい彼女は香菜みたく重たくないし、ウザくないよ」 「いいよ彼女の話は!」 「丹羽の同期で、部署は違うんだけど前から仲が良くて」 「もういい!」 今の彼女の話なんて聞きたくなくて、もう1枚ティッシュを取って盛大に鼻をかむ。 「香菜はもう丹羽にとって過去の女だから」 翔は低い声で私に言い聞かせるように言葉を吐いた。 「丹羽くんの合鍵……」 「あ?」 「別れたとき部屋の鍵返せって言われなかった。だからまだ復縁の可能性があるんだって思ってたの……」
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