きっと幸せを願ってるよ

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「うん……」 「でも、なる早で俺の気持ちに追いついてくれたら嬉しい」 照れて言葉が出ない代わりに何度も頷いた。 「ほら、もう丹羽のことは忘れたろ?」 「あ」 「できたじゃん。丹羽に対する熱意を新しい恋愛に向けられたな」 翔は満足そうな顔をした。 「帰るわ、用は済んだし」 立ち上がって玄関まで言った翔は「あ、そうだ」と座ったままの私を振り返った。 「丹羽の合鍵を本人に返した時のコメント知りたい?」 しばらく考えた私は首を左右に振る。不思議と翔のおかげで辛かったこの1年の思いが軽くなった気がした。 「いい。もう翔と向き合うことにしたから」 そう返すと翔は珍しく照れた顔をする。 「分かった……おやすみ」 呟くと翔が私の部屋から出て行った。 緊張が解けて胸に手を当てる。心臓が急にバクバクと激しく動き出したような気がしてくる。 『丹羽くんと別れた日』を『丹羽くんと付き合った日』で上書きして、更に『翔と付き合った日』として上書きする。 失恋を吹っ切るのに1年かかってしまった。 これからは丹羽くんを思い出すことは無くなっていくのだろうか。 願うのは、どうか失恋の痛みを二度と味わうことがありませんようにと。 ◇◇◇◇◇ 「招待状送るリストできた?」 私の質問に翔は「まだ迷ってる」と返事をする。 キッチンで野菜を炒めながらテーブルの前で結婚式に招待する人選に頭を抱える翔に「迷うことある?」と聞くと「丹羽だよ」と懐かしい名前を出してきた。 「丹羽くん?」 「上司にも同僚のほとんどにも招待状を送るのに、丹羽にだけ送らないってのはまずいだろ?」 背中を向けた翔がどんな顔をしているかは分からないけれど、私は「送らなきゃだめだよ」と言った。
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