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ここだけの話
それから3ヶ月が経った頃、
「ハロー元気にしてるかね?」と至近距離で
いきなり驚かせる目覚まし時計みたく、タックンは
弓子の耳元に語りかけてきた。
「わーもう、びっくりさせないでよ〜」
ところで、あの健太の文化祭から
奇跡的に大した怪我なく帰還した彼だけど、その後
あろうことか物言わぬ龍と化していたのだ。
「ちょっと本部に実印、取りに帰ってたのよ。
たまには顔出さないとお偉方がうるさいしー。
報連相って知ってる?直属の上司がこれまた、
木を見て森を見ず、みたいなタイプでさー、‥」
「で、何しに帰って来たの?」
「何ってーご挨拶だなぁコレだよ!認定証に、
俺様の捺印が必須じゃろ?
ハイ、良く頑張りましたね奥さん!」
『怨念返師㊙︎マニュアル』の付録に付いてた
認定証に、『龍』と大きな朱印が
鮮やかに浮かび上がる。
「ちゃんと見ててくれたんだ〜嬉しい〜でもまあ、
奥さんってのは、なんていうか卒業したんだけど?
昨日付けで。
んなことより、こんなに面白かった3ヶ月も
今まで無かったなぁ。」
「おー、そうだったの?んなことがあったんだ?
じゃあ俺、立候補するわ弓子さんの彼氏に。」
「何言ってんの〜この龍神ジゴロが〜あははは、
でも見て〜ほら私、ちょっと身体も引き締まった
でしょう?
身体改造㊙︎マニュアルに従って毎朝、競歩に
励みました♪
何事にもニッチを目指せ!ニッチャーになれ!と
いう教えに従ってね、競歩、正解だったわ。」
「さすがだねーそれで、今までの人生で、
自分のキャパの限界越えて貯め込んでしまった
怨念は、晴らせたのかい?」
「そうなの、そこがまずクリアにならないと、
この仕事を始める資格は無いわよね?
今まで、何やっても他人と比べて落ち込んだり
儚い優越感に浸ったり〜上手くいかないことは
他人のせいにしてみたり。
だけど、そんなかったるい世界とは、ハイ
さようなら‥
人間、生まれたら最後は死ぬだけだよ?
幾つになっても生きてる限り、自分探しに終わりは
ない‥だってそれが一番面白いから‥
ダーウィン知ってる?生き残るのは最も強い者では
ない、変化する者なんだって‥だからもう、
この程度で落ち着こうなんて今は真っ平ごめんかな‥私は進化したい!
それゆえ、この『怨念返師』という仕事の適任者は
私でいいのよ!
ごめん独りで喋りすぎだね‥」
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