至福降臨

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至福降臨

程なくして、弓子一人寝の夜がやって来た。 本を読みながら、 うっかり寝落ちしたものだから部屋の灯りは 付いていた、昼間のように。 レム睡眠時に金縛りに合うという話はよく聞くけれども、その時の弓子は目を瞑っているはずなのに 寝室の様子がハッキリと見えている。 軽くて半透明の大きな軟体が 寝ている彼女の身体に寄り添ってきたが、 部屋が明るいから怖くない。 「なんだろ?この物体‥触り心地良すぎだわ‥」 実際、抱き枕としては最高なのよ。 私の思うように形が変えられるみたいだわ‥ まさかのそうだ久しぶりに 重みを感じてみたいと念じたら、それは どうやら男の身体の感触だ‥。 それならば、と 一昨年の春、亡くなった我が家のペットを 思い浮かべたら、あの上等の毛布みたいな ゴールデンレトリバーの手触りがする‥但し、 日向の匂いは無い。 きっとタックンが、この可哀想な私を 慰めに現れてくれたのだわ、と弓子には解る。 私みたいな年頃の女には、思いっきりのハグが 必要なのよ‥、お薬よりも精神論よりも何よりも。 久しぶりに安らかな気持ちが蘇ってきて、 一晩中、半透明な彼に包まれるという至福の中 気がついたら朝になってた、という極上パターンを 有り難う。 もう貴方無しではいられない弓子だわ‥。
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