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お仕事
僕の仕事はモデル。かっこよくまたはかわいくポーズを取って写真に撮ってもらう。この仕事は僕から望んで始めたわけじゃなく成り行きで始めた。だけど意外と需要があるみたいで儲かっている。
「いいねいいね!」
カシャカシャとシャッター音が続く。大人しく写真に撮られるだけで報酬が出るなんて、割のいい仕事だ。しかも、仕事の合間に差し入れをくれることもある。それがこの仕事を続けている理由とも言える。
「はぁ……良い写真がいっぱい撮れたよ。ほら、見てみて」
撮影が終わった。フォルダには僕の写真がたくさんある。その中の一つを拡大して見せてきたので、まじまじと見る。うんうん、自分で見てもよく撮れていると思う。
「どれがお気に入り?」
聞いてきたので、液晶に手を伸ばして僕の意志を示す。撮られる以上はちゃんとしたのがいいからね。
「これ?」
「にゃー」
「だよね! 私も上手く撮れたと思ったんだよ!」
よしよし、と子供でも扱うみたいに僕の頭を撫でてきた。一応僕はサキよりも年上なのにいつもこうされる。嫌な感じはしないけどちょっと複雑。
「大人しく撮らせてくれたお礼におやつあげるね」
「にゃー!」
「あはは、尻尾ピーンってしてる! 本当にこれ好きだよね」
スティックに入った液体に近いおやつを持ってサキは戻ってきた。あれはとても美味しいやつだ。普段は全然くれないが、写真撮影の時に大人しくしているとご褒美としてくれる。
「落ち着いてゆっくり食べるんだよー」
そういいながら袋を開けて僕の方へ寄越した。食べている途中に背中やら頭やら撫でられたが食事中はやめて欲しい。気が散ってしまうじゃないか。
そうは思ってもサキには伝わらないので仕方なく撫でられたままおやつを食べ終えた。やっぱりあのおやつは美味しい。量が少ないのが残念だ。もっとたくさん食べたいのに。
「もう食べちゃったの? チャコったら食べるの早いなぁ」
「にゃー……」
「あ、すりすりして甘えてもダメだよ! あまり食べると太っちゃうからね!」
「にゃあ」
確かに食べたいなぁとは思ったけど、別にもっとくれという意味でやったわけじゃない。そう抗議してもサキには伝わらない。全く、サキはちょっと鈍いところがある。たまに僕の言うことを分かってくれないのだ。
「あれ、急に膝に乗ってきてどうしたの? 甘えたくなっちゃった?」
「……にゃ」
「最近仕事で忙しくて構ってあげられなかったもんね。ごめんね」
またあやす様に撫でられた。僕はそれくらいで寂しくなるほどヤワじゃない。ただ、ちょっと寒かったから温まるために膝の上に乗ったにすぎないのだ。
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