社長と秘書

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今でも思い出されるが、このとき私はけんちゃんが大好きだった。 こんな淡い時間も1年しか続かなかった。 父親の赴任期間が終わり帰国することになってしまったのだ。 けんちゃんとお別れしたくなくて、泣いて泣いて父親に残りたいと訴えたが、そんなことが叶うはずもなく無情にも帰国の日はやってきた。 私は泣きながらけんちゃんに日本に行きたくないと抱きついたが、けんちゃんは優しく頭を撫でながら、 「僕もいつか日本に戻る。いつか必ず会えるから、僕のこと忘れないでね。だから泣かないで。また会うんだから、さよならは言わないよ。またねって笑って会える日を楽しみにしていよう。」 と言ってけんちゃんは小さい体で私をぎゅっと抱き締めてくれた。 最後まで涙は見せずに笑顔だった。 まだ、幼かったので連絡先を交換するなどせずに、大きくなったらまた会おうねと約束しただけだった。 最後にけんちゃんが私にそっとお別れのキスをしてくれた。 これが私のファーストキスだ。 今でも鮮明に覚えている。 これが私の初恋だから。
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