「exe.ファイル」

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「exe.ファイル」

「おーい村田、休憩だぞー!」  遠くから班長の声が聞こえた。 (もうお昼かぁ…)  ボクはロッカールームに入り、朝作ったオニギリを詰め込んだ弁当箱を取り出した。いつものチェックの弁当袋を手に工場裏の川辺へ向かう。 川辺に座ると、弁当箱からおにぎりを一つ取り出しかじる。 今日は鮭フレーク入りのおにぎりだ。  そして、ポケットに忍ばせた、昨晩プリントアウトしたレイナの写真を眺めながら昼休みを終えた。 (一番人柄のいい班長に写真撮ってもらってPCに送ってもらおうかな…)  いつもの様に家に帰り、ご飯を炊く。 PCの電源をONにする。Outlookを立ち上げ、班長から送ってもらった撮ってもらった自分の写真が添付されたメールをチェックする。 (写真に撮られた自分の顔をこんなにも眺めるのは何年ぶりだろうか。……だめだぁ、こんな顔じゃ……。ニキビ跡もすごいし、そもそもこのエラが。)  改めて自分はブスであると再確認することになるだけだった。 「写真送れないな…」 Outlookを閉じ、考える。この顔じゃ無理だ。良い要素がない。身長も165ないし。ガリガリだし。なのに腹出てるし。 レイナちゃんだったら中身だけ見てくれるかな? いや、中身も自信ない。)   「ん?」 デスクトップ上に見慣れないアイコンを見つけた。30fdf437-f09e-40bd-9b7c-22356a294e34 (見覚えがないな…、exe? なんかインストールしたっけ…) 村田は無駄なものをダウンロードしない男なので、不思議に感じていた。 (中身は何だ?)  右クリックしてプロパティを開いた。 【tづあkじいあhじゃ】 ファイルの種類:アプリケーション(.exe) 説明:keorruok_~\**iaskourroek.exe 場所:\\b\ihe7zfdjjhza7eu\ サイズ:0KB 作成日時:1900年00月99日 「tづあkじいあhじゃ」という名のファイル。 「なんだよこれ。そもそも (b:)ドライブなんてこのPCないぞ?てか0KBって…」 念のため確認したが、(c:)(D:)のみのドライブだった。 「隠しドライブつくったっけなぁ…」 作ったような…、いやそれは前のPCだっけなぁ…。どっちしても、このファイルは初めて見る…、気がする。  村田はググってみることにした。 「……。JPGへ偽装したウイルス…」 あのレイナちゃんの画像か? でも普通に画像が表示されるから偽装ではない。そもそもレイナちゃんなわけがない。 「……。二重拡張子!?」(そんなものあるのか。) ま、とりあえず。村田はウイルススキャンを回した。 その時コメが炊きあがるジャーの電子音が鳴り響いた。 (ちょっと時間かかりそうだな。飯食お。)  いつもと変わらない、納豆と焼いた鮭とインスタント味噌汁を食べ終え、 再びPCの前に座り込んだ。  ウイルスチェックが完了していた。結果、検知なし。 「ウイルスチェックに何も引っかからない…」 でも、(b:)ドライブって。いつの間にかできたか?  [ディスクの管理]を確認したが、(b:)はない。  コマンドプロンプトを開いて "disk part" 実行して "list disk"を入力するが、(C:)と(D:)以外のドライブは表示されなかった。 「やっぱりないな(b:)なんて。」 (しかし気になるこの赤いアイコン。どうみてもヤバい。クリックしたら終わりだな。) (今日はレイナちゃん会えるんだから、時間がもったいない)  村田は、出現したexe.ファイルを[削除]し、 ゲームの世界へ旅立った。
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