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『タネなしブドウ』。
それを箱詰めする作業が僕の仕事だ。
僕は毎日、このベルトコンベアから流れてくるブドウを丁寧に箱に詰めていく。
それだけの仕事。
「なぁ……」
隣で作業する同僚が音声を発した。
「ただいま作業中です」
「…………ああ、そうだな」
隣の同僚が作業に戻るのを確認し、僕も作業に戻る。
「……ばかなやつ」
隣の同僚は意味のわからないことを呟いている。顔のパーツも少し崩れているようだ。
エラーかもしれない。今度主任に報告しておこう。
僕はブドウを箱に詰めればいいだけ。
ただ、それだけ。
それが僕の仕事。
それだけで人間たちが喜ぶらしい。
だから僕はこの仕事をする。
そのように指示をされている。
【了】
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