タネなしブドウ

3/6
前へ
/6ページ
次へ
「お前また手を止めているな」 「主任! すみません、つい……」 「何だ」 「か、考えごとをしていました」 「何だと? 作業中に考えごとをしていたのか?」 「はい……すみません」 「はぁ、考えをしていたのか」 「そうです。すみません……」 「お前もか?」  主任は隣の同僚に声をかける。 「自分は……」 「彼は悪くありません! 僕が彼の作業を邪魔していました」 「…………」 「そうか、それならお前だけ来い」  僕は主任の後をついていく。    ちらりと作業場を見ると、先ほど話していた同僚が僕の方をじっと見つめていた。  あの顔は、どうしたんだろう。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加