第一章 乗り越える旅路へ(後編)

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 目的地に着くと、誰からともなく大きく体を伸ばした。  新幹線の中で人生初の駅弁を食べた僕らは、心地よい揺れに身を委ね、ぐっすりと眠ってしまった。直前で葉月に起こされなかったら、全員寝過ごしていただろう。  寝てしまったことと座りっぱなしで固まってしまった体を伸ばし、ほぐす。大きく伸びをしてから力を抜くと、ほんの少し背が伸びたような気がする。気のせいだけど。 「なぁ、こっからどう行くんだ?」 「う〜ん、結構離れてるんだよねぇ。前来た時は車だったし、タクシー使った方がいいよね」 「私、子供だけでタクシー乗るの初めてかも」 「俺も俺も」 「僕もだけど……ほら、修学旅行で使うかもしれないし、ちょうどいいんじゃない?」 「まぁ、予行練習にはあり、かな?」  そんなやりとりをしながら、ルートを調べようとスマホを取り出す。  すると、画面に一滴の滴が落ちる。なんだろうと思う間もなく、土砂降りの雨が降り注ぐ。 「えっ!? なに!?」 「おわ、すげぇ降ってきた!」 「と、とりあえず屋根の下! 葉月も!」  葉月の手を引き、みんなで近くのデパートに駆け込む。
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