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うす寂れた路地の奥にある、これまたうす寂れた安酒場。
労務者崩れの男たちが数人、それぞれてんでに密造酒を呷っている。
ふらりと入ってきた若者はそのうちの一人を見つけると、ずんぐりとした背中を軽く叩いた。
「親方」
「チムか。もう出てきたのか」
「模範生だったもので」
「これからどうすんだ。俺の会社はもう無えぞ。婆さんおっ死んでから、なんもする気にならなくってなあ」
「まだまだこれからじゃないですか」
「へ、もう平均寿命はとうに超えてんだ。後はお前ぇの言ってた『罪を許される穏やかな国』待ちさ。ちぇっ、いらん事教えやがって」
「『掃除屋さん』を希望しました。刑務所内で資格を取って。即、採用だそうです」
「前科モンにゃお似合いだ。噂じゃ自殺志願者やジャンキーが殆どだそうじゃねえか」
「はい」
「おい、チム」
「はい」
「達者でな」
「親方も、飲み過ぎ無いことっすよ」
「うるせえ」
「お世話になりました」
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