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ヘルメットのバイザーに光が反射しなくなる頃、坑道の終点にチムはたどり着いた。
「よっと」
ギアとの連結を外すと、巨大な円筒の縁に手をかけて登った。
あたりは夕闇に包まれ、やけにはっきりとした星の輝きが瞬いている。
見下ろせば眼下に薄白い雲海。
チムは危なげなく30センチ程の縁に腰をおろし、再び天を見上げる。
小一時間はそのままだったろうか。
「本当に、おまえはそこにいるのか…?」
チムは右手を目元に持っていくと左右に擦るような動作を試みた。
が、指先は強化プラスチックのバイザーにぶつかり、コツ、と音を立てる。
「感傷にも浸れねえ」
肩をすくめると
「独り言、増えたな、俺」
器具を装着すると、坑道を再び降りていった。
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