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チムは周囲に漂うカビついた空気を深呼吸すると、軽く咳払いをした。
人ひとりが手を伸ばしたら、いっぱいになる坑道。
それが真上に一直線に伸びている。
遥か上空からは僅かな光が差し込み、チムの被ったフルフェイスのヘルメットを照らしている。
「さて、お仕事お仕事」
1メートル程の竿の先に四角いブラシの付いた、いわゆるデッキブラシ。
だがその先端はスチール製だ。
チムはそれで坑道の壁面に、こびり付いた黒い付着物を削っていく。
黒い削りカスはパラパラとチムの足元へ落下していき、見えなくなった。
チムは地上から500メーターの中空にいる。
体は作業着と一体になった昇降マシンと共に、坑道に沿って上下に敷かれたレールにギアで繋がっている。
アプト式の歯車がキイキイと音を立てながら、小柄なチムの体躯をゆるゆると上へ運んでいく。
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