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パーソナルカラー
宇宙世紀0079 1月3日 09:08
サイド2・ハッテ
『228、被弾機の着艦を最優先とする、そのまま待機されたし』
『228、了解』
戦闘はさして長くは掛からなかった。
そもそもハッテ防衛軍の脆弱な戦力などたかが知れているし、連邦駐留艦隊も港から出る前に潰すことが出来たので、戦闘は一時間とも掛からずに外周部の戦力は掃討された。
おれは、苦戦する22隊援護に向かい、援護しながら敗走するマゼラン級戦艦を沈める戦果を挙げた。
帰投中にイバラ隊長から、よくやったと褒められたがあんまり嬉しくなかった。
撃沈の瞬間、爆炎の炎と共に船外に放り出される人間を目にしてしまっからだ。
――頭では解っていたが堪えるな……
苦しみ、もがき、そして消えていく命。
それを奪ったのは自分だ。
戦争とはそういうモノだと隊長は言ったが、理想と現実にはこれ程の乖離が有るとは思わなかった。
スペース・ノイド独立の為と言いつつおれがしてることはタダの人殺しだ。
着艦後、艦橋に出頭せよと命令を受けおれはノーマルスーツを脱ぐことなく、そのまま艦橋に向かう。
エレベーターが艦橋に止まると親衛隊と入れ違う。
――何故、親衛隊が艦橋に?
おれは会釈するが向こうは、フンッと鼻息を立ててそのまま行ってしまった。
――なんなだった?
おれが艦橋に入ると艦長は上機嫌で出迎えてくれた。
「いや、少尉、見事な戦果だ」
「いえ味方の援護があったからこそ出来た戦果です」
謙遜するなと背中を叩かれながら力を入れる、叩かれた背中が痛い。
「先程、親衛隊とすれ違いましたが……」
艦長の先程までの笑顔が消えて神妙な顔で言う。
「知らん、何かを探してるようだったが」
「何かとは?」
「いや、それがわからん」
「わからない?」
「いきなり来て、ハッテで不審なモノを見なかったがと訊いて来た、そもそも戦闘中に不審なモノ等、見ている暇など有る訳がないのに」
そこでおれはドキッとした、おれは不審な船を見た、まるで戦闘を避けるように、こっそりと抜け出す船を、おれの引き攣った顔に気付いたのか艦長は静かに耳打ちした。
「お前さん、何かを見たのなら、そのまま黙って置け」
「どうしてですが」
「先程の親衛隊はキシリア様のところではなく、ギレン閣下の親衛隊だ」
「中央の?」
「キシリア様なら、大抵の事は反乱分子、反ザビ派関係だとわかるがギレン閣下のところは正直言って何をしているかわからん」
「……」
「いいか、黙っているんだぞ」
黙っていろと言うのは消されてたくなければ知らんぷりしろと言うことだと、これはつまりのところ連帯責任で自分にとばっちりを食いたくないから荒波を立てるなと言うことだ。
「了解です」
「そうかそうか、ガハハハッ!」
盛大に笑い出す艦長に艦橋の視線が一堂に集まる。
再び背中を叩かれる、本気で叩いてないかこの人?
「そうだ、君の戦果はわたしから艦隊司令部に送っておる、あとでジオン功労賞が授与されるだろう」
「おれは、それ程の働きなど――」
その先は再び背中を叩かれて遮られる、確信が取れたこの人、力加減出来ない人だ。
「それと、君の機体を塗装しろと艦隊司令部から命令が来ている」
「塗装ですか?」
「そうだ、何でも戦意高揚のプロパガンダに使うらしい」
機体の基本色を変更して通り名を付けて戦意高揚のプロバガンダに使うことが多い、『黒い三連星』などがその最たる例だ。
「どうする? 何色にするかね」
そうだな、色は――
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