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ジオン独立戦争
宇宙世紀0079 1月3日 07:20
サイド2・ハッテ
『地球連邦政府並び地球に住む全て者達に告ぐ』
ギレン総帥の演説をおれは薄暗いコクピット内で聞いていた。
『わたしはジオン公国総帥、ギレン・ザビである』
おれは静かに放送のボリュームを上げる総帥の声がコクピット内に響き渡る、今日この日、おれ達スペース・ノイドは新たな時代を築く事になる。
スペース・ノイド独立と言う新たな時代を築くのだ。
『だが、この屈辱の歴史も今ここで終わる! 腐敗した連邦政府を砕きスペース・ノイドの真の自立を勝ち取るため、我らジオン公国は地球連邦政府に対し、宣戦を布告する!』
そうこれは正義の戦争だ、大義は我らにあり、虐げられたスペース・ノイドを連邦政府に叩きつける。
『総帥の演説を聴いていたな、これより我々ジオンは地球連邦政府と交戦状態に入る、昨日まで枕を高くして寝ていた連中に目覚まし代わりに280ミリ砲をぶち込んで来てやれ!』
艦長の無線と訊くなりおれはメインモニターに火を入れる、映し出されたの格納庫発進前の警告ランプが点灯し始める、機体がゆっくり動き出しカタパルトデッキのレールに接続される。
「ザク228出るぞ」
発信ランプが青から赤に変わり、フットペダルを踏み込む。
機体が加速して体にGの負荷がかかりシートに押し付けられる。
ムサイのブリッジ後方に射出された機体を反転して左旋回、母艦を反時計回りして正面に出る。
目の前には巨大なスペース・コロニーが画面一杯に広がっていた。
あれがおれ達の攻撃目標である、サイド2の九番地であるアイランド・クイーンだ。
政府庁舎などが集約されている八番地のアイランド・イフィッシュとは違い、防衛施設などが集約されておりハッテ防衛軍や地球連邦軍ハッテ駐留艦隊司令部が置かれている番地だ。
おれ達の任務はこの番地を制圧して連邦軍とハッテ軍の抵抗を無力化することにある。
『貴様ら解ってると思うが、我々の任務は後方部隊到着までに敵艦隊の殲滅だ、ハッテ軍の戦力など二級品の骨董戦闘機に、毛が生えた程度の砲艦しかない、問題は駐留艦隊の方だ』
戦術マップに敵がシルエットが映し出される。
『ミノフスキー粒子散布前にレーダーで確認できただけで、サラミス級が八、マゼラン級が四だ、ベイ内にもまだ多数の艦隊が係留中と思われる、それらが出る前にベイを潰すぞ』
『隊長殿、もし、敵が命乞いして来たらどの様な対処をすればよろしいですかな!』
ニシウラが嫌味たっぷりな声で言う、無線の向こうから一斉に笑い声が聞こえて来る。
『その時は聞こえないふりをすればいい、もしくは、ギブ・ミー・チョコレート! だ』
『隊長殿! それは日本と言う国が戦争に負け――』
ニシウラのその先の言葉は無かった、突然飛んできたミサイルがニシウラのザクに直撃したのだ。
手足を吹き飛ばされ、そのまま胴にもミサイルが直撃して爆散した。
先程まで無線の向こうで話していた仲間が死んだ、あの皮肉屋のニシウラが死んだ。
『全機散開!』
隊長の合図と同時に全機が四方に散る、おれは北側(宇宙空間では北極星がある方を北としている)に上昇、直ぐ視界にセイバーフィッシュ二機が視界に入る。
ロックオン、引き金を引くだが、機体は左右に分かれる、この隊形の動きはどちらかが囮となりもう一方が攻撃になる戦闘機の基本戦術だ。
だとしたら、おれはフットペダルを踏み込む加速、左側が僅かに遅い、それを確認して右側にライフルを向け、引き金を引く、放たれた弾丸は戦闘機に吸い込まれるように命中する。
あれは落ちる、おれはそれを最後まで確認することなく、ザクの手足を振り上げるようにしてスラスターを使わず、機体を素早く反転させる。
AMBAC機動、四肢を持つ人型兵器であるモビルスーツのみに許された姿勢制御機動である。
瞬間的に反転したことに相手のパイロットは驚いたことだろう、何せ同じ位置で百八十度反転など戦闘機には出来ないからだ。
そのままおれは無標準で弾丸をバラ撒くように引き金を引く、弾丸の雨の中に突入したセイバーフィッシュは蜂の巣に用に機体に無数の穴が開き、その穴からスパークが走ると機体内の内規燃料である推進剤に引火、火球に姿を変えていく。
行き成り、戦闘機二機撃破、しかもこの間の僅か十五秒の出来事だ。
ほんの一瞬の出来事、それでもその一瞬でおれは二人の人間の命を奪った、奪ってしまった。
軍人になったからには覚悟はしていたが、まるで実感がわかない、おれは本当に人を殺したのだろうか、それすら解らなくなるほど、実感がなかったのだ。
落ち着くんだおれ、と言い聞かせている時だ、ふとアイランド・クイーンの方に不審な光点を見つける。
光点はスペース・コロニーが太陽の光を取り入れるミラー辺りからだ。
小型船? シルエットでは民間の貨客船、でも、なんでハッテ軍の砲艦が護衛してるんだ?
『どうした228、故障か?』
隊長からレーザー通信が入る、ミノフスキー粒子散布下ではこのレーザー通信が唯一の連絡手段である。
「いえ、あの――」
『22隊が苦戦しているらしい、我々は敵艦隊に突入して22隊を援護する』
「あの――」
『どうした? トラブルか?』
どうするべきが、言うべきかそれとも見方を助けに向かった方が良いのか。
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