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アイドルとして全力を尽くしたかと訊かれたら、答えはノーだ。
本当に売れていく人たちは私なんかよりもずっと真面目で、ずっと努力家で、ずっと才能に溢れている。
私にはとてもじゃないけど、あそこまで努力を重ねることはできない。
私は、そこまで真面目な人間にはなれなかった。
そんな私が唯一、誠実に取り組むと心に決めたことが、ファンを裏切らないこと。恋愛禁止を遵守することだった。
「他の人はどう思っていてもいいけど、やっぱり私はアイドルは恋愛禁止でいてほしいから、そこだけはファンを裏切りたくないから……」
いつの間にかいつもの仮面が外れている。月読瑠奈という仮面が。
──それなら、仮にもし俺と付き合ったらアイドルやめちゃうってことでしょ?
「まあ、そうなる、かな……でも、愛しのアイドルを独り占めだよ!」
少し茶化すように、今からでも冗談として流せるように誤魔化す。
でも、星影さんは、きっと私と同じくらいアイドル月読瑠奈に真剣だった。
──なら付き合わない!
──だって俺は、アイドルやってる瑠奈さんが好きだから!
何その断り方、なんなのよ、もう……
辛いのに嬉しくて、涙が溢れ始めた。
「でも、私だっていつまでもアイドル続けてなんかいられないんだよ? 私よりずっと若い子たちが何人も卒業してるのを見てるんだよ? 私もアイドルとしての適齢期はとっくに──」
──でも、瑠奈さんはまだ諦めてないでしょ? アイドルとして輝き続けることを。
本当に、本当にするどいな~……私をずっと見てるだけはあるよ。
そう、何度も諦めようとしたし、それに見合う理由もいくらでもある。
でも……諦められないんだよね……
言葉が出てこない。涙と嗚咽で、とてもじゃないけど他人に見せられないことになっていた。
──もしも瑠奈さんと結婚できたらと、夢に見るくらい思ってるよ。付き合おうって言われたら即答でオッケーするよ。
──でもそれは、今じゃないと思う。
──いつか、瑠奈さんがアイドルとして全部を出し切って、もうこれ以上ないってくらいやり切った時、その時にもし俺を選んでくれるなら
──俺と一緒に人生歩もう!
そうして星影さんは、いつも心から叫んでくれる言葉を投げてくれた。
──世界で一番愛してる‼
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