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その後も何度かユニット組んだり別れたりしながら、月読瑠奈としてアイドル活動を続けてきた。
比奈と二人の時は衣装と呼べるようなものも無く、コスプレ用の制服を着て舞台に立っていた。
今はそれなりに様になる衣装もあるし、オリジナル曲も十曲ほどある。
地下アイドルと同じく、私がしらないだけで実はフリーで曲を作る人も案外多く、探せば値段もクオリティもピンからキリまで揃っていた。そういう人に依頼して曲を作ってもらったのだ。
かつての私が想像していたよりはずっと安く、地下アイドルの金銭感覚に染まった私にはなかなかの高額で……
「お金が、無い……予約も、ない……」
アイドル活動というものは、真面目にやるととにかくお金がかかる。
衣装は着ればヨレヨレになる。楽曲もだんだん飽きられる。メイク道具なんかもちろんのこと、服も曲もみんな消耗品だ。
「『新曲まだかな』って……ファンは気楽でいいよな~……」
アイドルやオタクがよく使うSNSのトリッターを眺めながら、SNSには決して書けない言葉を呟いた。
大学を卒業したあと、アイドル活動を続けながら土日は必ず休める事務職に就職した。
そのまま二年間はアイドルと社会人という二足の草鞋で頑張った。そのおかげで一時期はオリジナル曲を一度に複数リリースしたり、ボイスレッスンに通ってみたり、ちょっと豪華な衣装を着ていられた。
ついでにちょっと人気が出た。具体的に言うと、ワンマンで小さな箱が埋められるくらい……
人気が出ると同業者のアイドルから声がかかる。
アイドル自身もよくライブの主催をやるからだ。
複数のアイドルが持ち時間十五分から三十分くらいでステージに立つ、いわゆる対バン形式というやつだ。
わざわざ自分を指名してくれたからにはなんとか出演したいと思うのが人の人情。
平日も誘われることが増えて断りきれず、いつの間にか片方の草鞋を脱いでいた。
職業、地下アイドル兼フリーターになっていた。
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