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「あ、やっほ~! やぴまる水産おつみんた!」
相変わらず謎の日本語を繰り出している。
あの日、太陽のようだと思ったアイドルさんだ。彼女も未だにアイドルを、地下アイドルを続ける同業者だった。
いつの頃からだったか、彼女は太陽神を自称しながらアイドルをしている。
そんな先輩アイドルの配信を眺めていた。
私も使っているトリキャスという配信サイトだ。
リアルタイムで見ている人の数が表示されることと(配信中にきた視聴者総数しか表示されないものもある)、トリッターとの相性が良いので気に入っていた。
彼女の配信には常に十人以上の視聴者がいる。私とは違って……
「お、あまちゃんまん! おつみんたの極みんた~。この前はお店に来てくれてありがと村のタヌキまる!」
配信によく来るファンに挨拶している。
本当に語感の良い言葉がぽんぽん飛び出すアイドルだ。
彼女は自分がアイドルをやるだけでなく、アイドル事務所を立ち上げていたり、オタクとアイドル向けのバーを経営していたり、多彩な才能を発揮していた。
私はその事務所を受けたことも、バーに足を運んだこともないけど……
アイドルを始めてから一度も、憧れの太陽神に声をかけたことはない。
いつか自分も立派な、胸を張って言えるようなアイドルになってから声をかけよう。そう思ってからもう八年が過ぎているなんてね……
画面の向こうにいる理想と、ここにいる自分との違いに心を抉られるようだった。
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