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「う~ん、今日は人少ないね~……」
──そだね~。
「みんな忙しいのかな?」
──はい! 暇な人がいます! ここに一人!
「そうだった! 星影さんは暇人だった」
──そうそう暇人……って、だれがニートやねん! ちゃんと働いてるわい!
相変わらず閑古鳥が鳴きそうな私の配信部屋だった。
今見ているのは星影さんただ一人。
星影さん……たしかアイドル始めて三年目くらいからのオタクだ。
今ではもう最古参になってると思う。少なくとも、ライブを観に来てくれるほどのファンの中では一番の古株だ。
そして、彼は──
「ねえ、星影さんってさ、私にガチ恋、してるよね?」
──え! ええと、まあ、一応……
ガチ恋、アイドルにガチで、本気で恋心を抱いているオタク……
いつもは愛してるとか気軽に言ってくれるのに、真面目に訊くと煮え切らない答えしか帰ってこないのは、なぜかどのオタクも共通している。不思議だ。
そんなの、見つめられてる側には一目瞭然なのに。
「ねえ、星影さんは私と付き合いたい? 恋人に、なりたい?」
──ととと、突然どうしたの!?
「いやあほら、私も結構いい歳だし、そろそろ次を考えなきゃいけないかな~って……」
──え? まだ17歳じゃなかったっけ? お酒の飲める17歳じゃなかったっけ?
「そうそう17歳! もうすぐ十年目に突入する永遠の17歳だよ!」
──ワカイデスヨネー。
「なんでカタコトなんだよー!」
二人で軽く笑いあったあと、そのまましばらく沈黙が訪れる。
思わずため息がこぼれた。ファンにこんなこと言っちゃうなんてアイドル失格だ。
……でも、もう限界かもしれない。
いや、とっくに限界は超えていた。
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